「あとは柿が案内してくれるから」


「あとは柿が案内してくれるから。名前、達者でな」
「ああ。紫黒の方こそ。また会う時まで」
「また会う時まで」

洞窟を出て、紫黒に手を振った。
彼の使う鳩・柿を貸してもらい、忍術学園まで向かった。夜中、雨が降っていたのか道はぬかるんでいた。空を見上げると昨日と変わらぬ快晴だったが、万が一でも天候が変わるかもしれない。山の天気は変わりやすいといわれているのだから。

「雨が降らないか心配だ…。よし。柿、行こうか」
「ポポー!!」

任せてくれと言ってくれたのだろう。
彼なのか彼女なのか不明な、この鳩は頼もしげに一鳴きした。



数刻が立った。明け六つ(6時頃)に洞窟を出たので恐らく今は昼八つ(14〜15時)ほどだ。雨が降るか心配だったが、どうやら杞憂になるだろう。
ひたすら歩いていると茶店を見つけた。もくもくと煙が出ており、まんじゅうを蒸す匂いが漂った。

「休んでいこうか」
「ポー」

柿も空腹のようだったので丁度いい。茶店に寄ることにした。

「いらっしゃい。何を頼むんだい?」
「みたらし団子2本と草団子を1つ」
「あいよ。ちょっと待ってておくれ」

お茶をすすり、注文を待つ。外の風景は変わらず、のどかだ。

「きび団子も頼むべきだったかなあ」
「ポ?」
「柿の分のお団子だよ。君、お団子とか食べる?」
「ポーウポポ!!」
「ごめんごめん。みたらし団子ちょっとあげるから」
「ポー」

柿から俺も食べるよーと抗議を受けた。

「おまたせしましたー。みたらし2つと草団子1つ」
「どうも。いただきます」

甘味を食べたかったので、茶屋に寄れてすごく有難い。

「おいしいなぁ」
「ぽぽ」
団子のうまみを堪能していると、柿からまたもや怒られた。

「はいはい」
「ぽー」

あわてて草団子の方を小さくちぎってあげると、柿はおいしそうに食べ始めた。
もう少し残しておかないと怒りそうだな。

柿の分を少しだけ残して、そのまますべて食べた。どれもできたてだったらしく、温かくてすぐに食べ終えてしまった。懐かしい味がした。佐江様がご存命の時に毒見をした時の和菓子とよく似ている。

「ご馳走様でした」
「ぽー」

「あんた、細いのによく食べるね。どこから来たんだい?」
食後のお茶を堪能していると、店主から声をかけられた。

「私たちはあっちの真赭城のある方からです」
店主は私の答えを聞いて、酷く物寂しげな顔つきになった。

「あっちか。この前落城したと聞いて世の無常を嘆いたさ」
「お殿様とご交流でもあったんですか?」
「城主の佐江様が和菓子好きな方だったんだよ。よく城の料理番の方が、うちの和菓子をごひいきにしてくださっていたんだ。お殿様のお口に合うなんてって思っていたからひどく驚いてね。お亡くなりになったときはひどく驚いた」
「そうだったんですか…」

だから懐かしい味だったのか。私は佐江様の毒見役もしていたので、酷く懐かしい味だと思ってた。庶民的な方だったから、ありうる話だ。

「他の城のお殿様がここらを統治するのだろうけど心配だねぇ。ああ、長くなってしまって申し訳ないわ」
「いえ…」

それからお勘定を済ませる前に、いくつか包んでもらうことにした。

「草餅とまんじゅうを3つずつ包んでいただけますか?」
「ちょっと待っておくれね」

店主はすぐに私が注文したものを持ってきてくれた。

「ご注文いただいた品と合わせて…13文だよ」
「これでお願いします」
「はい。丁度。まいどあり」

懐にまんじゅうを仕舞い込み茶屋を出た。
店主に聞いた話によると、ここからまた結構な距離に宿屋があると教えてもらった。
今日はそこまで歩いて行かないと。