今度こそ、仲間だと思っているのだろう。もしそうならガキ共10人程を相手にしなければいけない。…本当にこいつの仲間なら、ね。
「呼んどいたツレ共だ。これでこっちは10人。おまえらみたいな良い子ちゃんは、見た事も無い不良共だ」
それに答えるようギィ…ギィイイと不気味な音を立て開く扉から出てきたのは、泡を吹かせながら気を失い"不良"のふの字も無いマルコメ渦巻きメガネ共。
それを片方の触手で持ち上げ、見せつけるよう前に突き出している。
「不良などいませんねぇ。先生が全員、手入れしてしまったので」
目を光らせニヤリと笑った。
「殺せんせー!!」
殺せんせーだとは思っていなかったのか、一気に渚の顔色が変わる。
「遅くなってすみません。この場所は君達に任せて…他の場所からしらみ潰しに探してたので」
『…なあに、その黒子みたいな顔隠しは』
「暴力沙汰ですので、この顔が暴力教師と覚えられるのが怖いのです。渚君がしおりを持っていてくれたら…先生にも迅速に連絡できたのです」
渚を褒めながらカルマ達にしおりを渡す殺せんせー。持ってきたのかよ…にしても流石は渚。やっぱりあのしおり、ちゃんと持ってたんだね。
「………せ、先公だとォ!?ふざけんな!!ナメたカッコしやがって!!!」
今まで黙ってた男だったが、ごもっともな意見を並べながら残った男共全員でそのへんの武器になるような物を持ち、殺せんせーに一斉に殴りかかる。
…無駄なことを。
当然、マッハ20の攻撃をなすすべもなく受けた男達は、ガクンとその場に力無く座り込み今、何されたんだ?とでも言いたげな顔で先生見つめるだけ。……攻撃、見えなかった。
「ふざけるな?先生のセリフです。ハエが止まるようなスピードと汚い手で…うちの生徒に触れるなど、ふざけるんじゃない」
顔面をどす黒くさせ、低い声で男達に告げた。何、めちゃくちゃカッコイイ殺せんせー惚れるかと思った。
「………ケ…エリート共は先公まで特別製かよ」
ガクガクと足を震わせながらもなんとか踏ん張り、悪態を付きながらも立ち上がる。いや、いやいや…んなわけあるか、いねえよこんな先生。全国…いや世界にここだけだわ。アホかこいつは!
いや……アホだった。
「テメーも肩書きで見下してんだろ?バカ高校と思ってナメやがって」
バチンと音と共に出てきたのは、折り畳みナイフ。それに何の動揺も示さないまま殺せんせーは答えた。
「エリートではありませんよ。確かに彼等は名門校の生徒ですが、学校内では落ちこぼれ呼ばわりされ、クラスの名前は差別の対象になっています。
ですが彼等はそこで、様々な事に実に前向きに取り組んでいます。君達のように他人を水の底に引っ張るようなマネはしません。
学校や肩書きなど関係ない。清流に棲もうがドブ川に棲もうが前に泳げば魚は美しく育つのです。
…さて私の生徒達よ、彼等を手入れしてあげましょう」
その言葉を、待ってましたと言わんばかりに男達の後ろで不気味に動いた影。あぁ、こりゃまた、ご愁傷様です。
「修学旅行の基礎知識を、体に教えて(物理)あげるのです」
なんの躊躇もなく渚達は男達に、あの分厚い分厚いしおりを後頭部に叩きつけた。
ガツンッ!!!!!
おい待てカルマ!!なんで標的変えてもっかいぶったの!!?
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