「「ビッチ先生まだ二十歳ィ!?」」
大部屋に生徒達の声が木霊する。へぇ、まだ二十歳なんだ。私の1つ上じゃないか。見えないな、やっぱ美人だな。
「経験豊富だから、もっと上かと思ってた」
「毒蛾みたいなキャラのくせに」
「それはね濃い人生が作る色気が…誰だ今 毒蛾つったの!!!」
『ぶはっ!!!くっくっくっ…毒蛾……!』
なによ!!遊乃、笑ってんじゃないわよ!なんてこちらにも飛び火がくるが、笑いが止まらない。
そんな私とはうってかわって、突然落ち着いたイリーナが真剣に伝える。
「女の賞味期限は短いの。あんた達は私と違って…危険とは程遠い国に生まれたのよ。感謝して全力で女を磨きなさい」
『…………』
真剣なイリーナの表情を横目にビールを飲み干す。美人見ながらの酒はうまい。
「「ビッチ先生がまともな事言ってる。なんか生意気〜」」
『あっはっは!!』
「なめくさりおってガキ共!!!」
『…ふ…でもイリーナの言う通りだよ。こういう"普通"の日常を過ごしたくても過ごせない子達は、この世の中には驚くほどたくさんいる。本当にこの国に生まれたことは幸せよ?』
ふわりと笑って見せる。その通りだ。本当に。
「「なんか遊乃さんに言われると本当にそうなんだなって思うよねー」」
「こんのガキ共が!!!!!」
本当に楽しいわこいつら。飽きず絶え間なく笑わせてくれる。
「じゃあさじゃあさ、ビッチ先生がオトしてきた男の話聞かせてよ」
「あ、興味ある〜」
『私も興味ある』
何故か窓枠に座り、もたれ掛かってる私の隣に来るイリーナ。
『………はぁ』
話始めようと、女子生徒を眺めるイリーナのその視線の先には黄色のデカイ物体。
「おいそこォ!!!」
ビシィッと効果音がつきそうな勢いで殺せんせーを指さし、
「さりげなくまぎれこむな女の園に!!」
ごもっともな意見ですイリーナ。まあ、そういう話が大好きな殺せんせーからしたら興味津々なんだろうな。
話を聞く気満々なんだろうが。生徒達の標的が今度は殺せんせーに向かうのは一瞬のことだ。
殺せんせーに恋の1つや2つないのか!だの初恋はいつだ!だのもろもろ……。
困った殺せんせーは、
『あ、逃げた』
途端に武器を構え、即座に追いかける生徒達。イリーナまで混ざってるよ。そして何故か男子にも追われている。
…何したんだ殺せんせー?
少しの間、ふすまから生徒達の様子を眺めその光景に緩む頬を抑えられなかった。
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