外は生憎の雨だ。梅雨の時期なのだから当たり前と言えば当たり前だが。雨はあまり好きじゃない。気圧の変化で頭が痛くなるし、出掛ければ濡れてしまう。まあ些細なことだが…
ボーッと窓の外を眺めながらそんなことを考えていると
「おはようございます」
挨拶と共に殺せんせーが入ってきた。そして早速、転校生の話題を皆にふるがもちろんみんな知っている。律の時と同様で知らせのメールが烏間から入っている。
だが詳しいことは何も書かれていなかった為、原さんが同じ転校生として何か聞いていないのかと律に尋ねる。
「はい、少しだけ」
と微笑み律は話し出した。
「初期命令では…私と[彼]の同時投入の予定でした。私が遠距離射撃、彼が肉薄攻撃。連携して殺せんせーを追い詰めると…
ですが2つの理由でその命令はキャンセルされました。
ひとつは、彼の調整に予定より時間がかかったから。もうひとつは、私が彼より暗殺者として圧倒的に劣っていたから」
律の方が圧倒的に劣っていた。
2回目の射撃で殺せんせーの指を飛ばした律が…だ。
殺せんせーや皆の顔が一瞬で変わる。律の性能では彼のサポートをつとめるには力不足。そこで、各自単独で暗殺を開始。重要度の下がった律が先に送りこまれた。とのことらしい。
シーンと皆、律を見つめて固まり静まり返る教室。
…彼の"調整"…ねぇ
そんな疑問をよそにガララッと派手な音を立てて教室のドアが開く。一斉に肩を揺らしドアの方を振り向く生徒達だった。
さて、どんな子が来ることやら。
謎の白い煙を纏わせ入ってきたのは、白装束を着て顔まで隠した1人の男だった。目元すらもあまりよく見えない。いや、怪しすぎるだろどう考えても。突然手品なんてするし怪しすぎるだろ。
殺せんせーなんて液状になって天井に張り付いてビビってるし、謎の男の自己紹介は転校生の保護者らしく、白いしシロとでも呼んでくれとかテキトウだし、とにかくもう怪しすぎるだろ。
そしてそのシロは、イトナ入っておいでと叫んだ。……叫ぶ必要性あったのか?
そして転校生は入ってきた。
ゴッと派手な音を響かせ私の後ろの壁から入ってきた。壁から…壁、から…入ってきちゃったよこの子。何事もなかったかのように席に座ったよこの子。
「俺は…勝った。この教室のカベよりも強い事が証明された。それだけでいい…それだけでいい…」
………いや、うん……うん、すごいね。彼、濡れてないし。驚きのあまり殺せんせーもすんごい不思議な顔になってるよ。なにあの中途半端な表情。私もすんごい顔してるんだろうけどさ、
チラと右隣の赤を見るとイトナ君を見つめ口を開いた
「ねぇ、イトナ君。ちょっと気になったんだけど今、外から手ぶらで入って来たよね。外どしゃ降りの雨なのに…なんでイトナ君、一滴たりとも濡れてないの?」
その質問に、何故かきょろきょろと周りを見て立ち上がったイトナ君。ふいに目が合い数秒見つめられ逸らされる。
「………おまえは、たぶんこのクラスでこの女の次に強い。けど安心しろ俺より弱いから…俺はおまえらを殺さない。俺が殺したいと思うのは俺より強いかもしれない奴だけ。この教室では、殺せんせーあんただけだ」
くしゃくしゃと、カルマの頭を撫で殺せんせーの前まで歩みを進める。答えになってない行動になのか、頭を撫でられたことになのかムスッとしている。
既にカルマに興味はないのか、ビシッと殺せんせーを指差し殺したい宣言。つーかこの女ってなんだよ
殺せんせーにいたっては、ムシャムシャとシロから貰ったようかんを包み紙ごと食べ、余裕の表情で答える。力比べでは同じ次元には立てない、と。
だが、イトナ君は続ける
「俺達、血を分けた兄弟なんだから」…と
その瞬間、揃いも揃ってハモる教室の生徒達。兄弟ねぇ…あのタコモンスターに兄弟ねぇ…とはいっても先生の顔も驚きに満ちている。そんな皆をよそにイトナ君は放課後、この教室で勝負だ。と宣戦布告。
元来た壁から去って行った。うん、謎しかないよ。ド派手な登場したかと思ったら宣戦布告して去ってったよあの子。どうすんの殺せんせー
イトナ君が去った途端に、我に返ったように殺せんせーへ質問攻めをする生徒達。それ横目に左隣の席をチラと見据える。どうなることやら
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