勝負は見事に決まった中、シンと静まり返るクラスの皆。そこには誰もが驚きの表情を浮かべていた。

多分一番に衝撃を受けているのは、烏間だろうな。その証拠に目を見開き固まっていた。その最中、沈黙を破ったのは一人。


「そこまで!!まったく、怪我でもしたらどうするんですか」


渚の手からナイフを取り上げ、危ないなぁとボリボリ食べる殺せんせー。


『…食べちゃうんだ』


いつまでも腰が抜け、放心状態の鷹岡。よほど勝つ自信があったんだろう…いや、"勝つ自信しか"無かったんだろうな、悔しいだろうな、あれだけ大口叩いてたんだから。

鷹岡の前に立ちポケットに手を突っ込んだ。私が目の前に立とうがこちらを見ようとはしない。


『……そんなに負けたことがショック?ハ、だろうな?軍に所属しているオレが勝つに決まってる?…いや、負けるっつー概念すら無かっただろうな。

でも残念。あんたは一方的な暴力で見世物にしたかったんだろうが、ソレに対してあの子は"暗殺"しようとしたんだ。…恐かったろ?』


ニヤリと鷹岡の顔をのぞき込むよう屈めば、動いた口元。


「…れ、だ…れ。………だまれ黙れダマレダマレッ!!!!!」


しまったやり過ぎた、力の限り私目掛けて振られた、私より二倍はありそうな腕は、手加減を知らないようで、とっさに防いだ両腕が痺れる程だった。


「遊乃ちゃんッ!?」

『っつー、…んのクソ野郎ッ!!』


誰かが私の名を呼んで体制を立て直した時には、彼…鷹岡は怒りの表情を剥き出しに、渚を見下ろし口を開けば「父親同然の俺に…」と血走った目で睨みつけていた。


舌打ちを零して、渚の前に庇うよう右腕を出すが、あろうことか、それを止めたのは渚本人だった。


「もう一回だ!!今度は絶対油断しねぇ。心も体も全部残らずへし折ってやる」

「…確かに次やったら絶対僕が負けますでも…ハッキリしたのは鷹岡先生、僕らの"担任"は殺せんせーで僕らの"教官"は烏間先生です。これは絶対に譲れません。

父親を押し付ける鷹岡先生より、プロに徹する烏間先生の方が僕はあったかく感じます。本気で僕らを強くしようとしてくれたのは感謝します。

でもごめんなさい。出て行って下さい」


私より前に出た渚は、鷹岡に向き合い冷静に言葉を並べた。それはきっと渚の本心で、E組の皆を代表するように臆することなく全ての想いをぶつけた。


『(本当に、良いクラスで、良い生徒だわ)』


ほら、烏間…今度はあんたが応えなきゃ。この一途な生徒に、想いをきちんと表した生徒達に。


飛びかかる鷹岡を一瞬で倒した烏間に、迷いの表情はもう無くて…


「……俺の身内が…迷惑かけてすまなかった。後の事は心配するな。俺一人で教官を務められるよう上と交渉する。いざとなれば銃で脅してでも許可を貰うさ」

『それはどうなの…』


ふと、視線を感じてそれを辿り後悔した。あぁ、まためんどくさいの来たよ…今しがた面倒が終わったとこだったのに…。タイミング良いねぇ、まじで。


交渉の必要は無いと発した、めんどくさい先せ…。理事長サマは、綺麗な姿勢で一直線に鷹岡の元へ歩いて行く。口を開いて毒を注入するように簡単に解雇通知を詰め込んだ。


『…理事長サマが一番のボスってことね』

「あぁ…鷹岡を切ることで誰が支配者かを明確に示した」

『どう転んでも理事長サマの掌の上…ってこと。おー恐…渚に癒してもらおっと』


渚を呼んで、勢い良くその小さな体に飛びついた。思い切り頭を撫でて、良くやったと赤くなってる頬を眺めた。

あー、うん、スッキリした。ありがと渚。お疲れ様…。


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