7月も中旬、項垂れるような暑さとは言えないが、それなりに暑くなり始めた昼休み。昼食を渚やカエデと食べてる最中、突然彼女は思い出したように呟いた。


「暑くなってきたねぇ。あ、そういえばもうすぐプール開きじゃん!」

「そういえばそうだね。もっと本格的に暑くなってきたら、プール開きは嬉しい授業になるね」

『……っ!?』

「…ど、どうしたの遊乃さん」


何気なく会話を聞いていたが、ちょっと待て。プール、開…き……?プールの、授業…?それって、それは、…それは、つまり、


「遊乃ちゃんの水着姿が見れるってことだねぇ」

「カルマくん…」


そう、そうよ、水着、水着…やばいやばいやばい!!!中学生のプール授業と言えば水着!!スクール水着!!!…ムリムリムリムリ、絶対無理!!!犯罪になる!!!


食べかけのパンを机に置き、おもむろに立ち上がる。ビックリしている二人とニヤついてる一人を他所に、ボソリと呟いた。


『ちょっと職員室行ってくる』

「い、行ってらっしゃい…」



◇◇◇



ノックもせず勢い良く開いたドアは派手な音を立てて、中に居た二人を驚かせるがお構い無しに目当ての人物に近づいた。


「ど、どうしたのよ遊乃」

『ちょっとね。烏間、話があります』

「…なんだ」

『この学校にはプール開きっつーものが、あるらしいですね』

「あ、あぁ」

『スクール水着なんて、着れない』


私の一言にポカンとする烏間。イリーナなんて腹抱えて笑ってるし、笑い事じゃねえ!ばか!こちとら真剣なんだぞ!大問題だ!


「ヌルフフフ、問題ありませんよ遊乃さん。お好きな水着を用意して頂いて構いません」


突如窓から現れた殺せんせーは、いつから聞いていたのか、どこかへマッハで昼ご飯を買いに行っていたであろう袋を持って、いつものように笑顔を浮かべそこに立っていた。


『あ、あ…えっと、それは有難いですけど、お好きな水着も持ってない』

「ハァ!?あんた本気で言ってるの!?女が水着の一つや二つ持ってないで、どうするのよ!?それでも女!?」


持っていない、と聞いた瞬間に血相変えて近づいてきたイリーナはこれでもかという程、肩を揺らす。勢いに負け思わず謝ってしまう。……あれ、謝る必要あったかな…?


「ったく、今日の放課後空けときなさい。買いに行くわよ」

『えッ、嘘、いいよ、あ、見学して「いいわね?」…ハイ』



職員室の扉を閉めて、頭を捻る。…どうしてこうなった?ていうか最初から見学してれば良かったのに、あれ?何してんだ私ほんと、


教室に戻り心配してくれてたカエデ達に理由を話し、机に項垂れる。いつまでもニヤニヤしてるカルマに今は殺意が湧いた。

後半の授業もあっという間に終わり、イリーナに迎えられ只今車中。なんだかデジャヴです。


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