チャイムの音が鳴り響くのを、後ろで聞きながら木に寄りかかった。初登校の次の日にいきなりサボりだなんて、とんだ素行不良もいいとこだ。



ポケットからタバコとライターを取り出し、おもむろに火をつける。スゥっと肺に煙が入るのが分かる。そして、ふぅーっとゆっくり息を吐いた。


『あー、うま』


やっぱこれだけは辞められない。ヘビースモーカーじゃないだけマシだ。あー、それにしてもこの季節の気温は本当にちょうどいい。暑すぎず寒すぎず、過ごしやすい。


「あっれ〜?お姉さんも集会フケたんだ」


突如、後ろからは足音と、聞き覚えのある声がした。声の方を振り向かずとも、


『……赤羽君…も、サボりなんだ。あんな所、行けるわけないじゃない』


何故か、当然のように隣に寝転んだので顔を見なくても誰なのか分かった。


「まぁね〜。あんなのフケて罰喰らっても、痛くも痒くもないし」

『うん、なんか、赤羽君らしくて納得したわ』

「何それ、俺がいつもフケてるみたいじゃん」

『違うわけ?』

「あってるけどね」


やっぱあってるんじゃない。


スマホを取り出し、片方の耳にイヤホンをつけて音楽を聴いている赤羽君をチラリと覗き見る。本当にイケメンだなこいつ。


これが中学生か…クオリティ高いよ神様。


『ねぇ、イケメンくん…隣に来て煙たくないの?』

「イケメンくんって…別にへーきだよ。てかお姉さんまだ未成年でしょ?」

『へぇ 覚えててくれたの、光栄ね。もう二十歳になるからいいのよ。そろそろ、そのお姉さんっての辞めない?なんか落ち着かないわ』


ふぅっと煙を吐き、チラと隣を盗み見る。


「うーん、じゃあ遊乃ちゃん。俺のことも名字じゃなくて、下の名前で呼んでよ。あ、君付けは無しね」

『分かった、よろしくカルマ』


それを境に携帯灰皿にタバコを押し付け、立ち上がり思い切り背伸びをする。
自然と出た声にエロいよなんて聞こえたが、それは、聞こえないフリをした。


『そろそろ戻ろうカルマ。皆戻ってくる』





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