「…カルマくん、焦らないで皆と一緒に殺ってこうよ」


校舎裏、奥の崖。その崖の先には、大きな太い木が椅子のように伸びている。木の上に座るカルマの真下は、落ちれば助かる可能性の無い高さだ。
よくそんなとこ座れるな。私は側に来ただけでも怖いってのに。


「殺せんせーに個人マークされちゃったら…どんな手を使っても一人じゃ殺せない。普通の先生とは違うんだから」

「…………………やだね、俺が殺りたいんだ。変なトコで死なれんのが、一番ムカつく」

『あの先生はそう簡単に死なないと思うよ。それに私言ったよね。殺せんせーは違うって』

「俺も言ったよ、それは俺が決めるって」


…ぐぅの言葉も出ませんですはい。ぽりぽりと頬をかいては、小さく小さく息を吐いた。今は何を言っても無駄だ。カルマが納得いくまで好きなように殺らせないと、きっとカルマは諦めない。


「さて、カルマくん。今日は沢山先生に手入れをされましたね。まだまだ殺しに来てもいいですよ?もっとピカピカに磨いてあげます」


突如現れた先生の声に、こちらをゆっくりと振り返ったカルマ。


「………確認したいんだけど、殺せんせーって先生だよね?先生ってさ、命をかけて生徒を守ってくれるひと?」


ニッコリと、そう笑顔で


「もちろん。先生ですから」

「そっか、良かった。なら殺せるよ」


銃を構えたカルマに、酷く嫌な予感と共に心臓が一際大きく、鳴いた。


「確実に」


後ろへと落ちて行くカルマに、足を踏み出し腕を伸ばすが、触れたのはカルマの服の先『う、そ、やば……!!』勢いを殺せずそのままカルマと同様、落ちる。

渚の声が後ろから聞こえた。

銃を構えたままのカルマは私と目が合い、大きな瞳はさらに見開かれた。伸ばされた腕に掌に指先が触れた瞬間、勢い良く掴まれ引き寄せられる。

腰を抱かれ、有り得ない程の恐怖から涙が出た瞬間、急な沈む感覚と足に触れた何か粘ついたもの。カルマの胸に顔を埋めていたが恐る恐る見上げると黄色いネットのようなものが私達を包むように張り巡らされていた。

"殺せんせー"

それが分かった途端に力が抜け、またカルマの胸の中に雪崩込んだ。頭を包まれ指先が髪を撫でる。大きなため息とネットの間から出てきた殺せんせーを見て、安心する。自然と閉じた瞳から涙が一筋零れた。


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