あんな険しい山道を走ったせいか、ゼェハァと息は上がり全身が重い。鞄から水を取り出し半分程、喉に流し込みやっと少し落ち着いてくる。

…帰りたい。非常に帰りたい。物凄く頑張って走ってきたけど帰りたい。だって教室、静かすぎやしませんか?居ない?もしかしてみんな居ない?…いや、んなわけねーか。どうしよう帰ろうかな、どうせ誰も私のこと知らないだろうし私だってあんまり知らないし明日ちゃんと時間通り何食わぬ顔で教室居たらい"ガラッ"


『ッ!?!?』


ドアに背を向け、よし帰ろうと方向転換したところで聞こえた嫌な音。視界の端に映る黒いスーツの男の人。ゆっくり動かしすぎてギギと響くのは自分の首、そして目が合った人物。それはもう鋭い目つきをしてらして牙でも生えているんじゃないだろうか?

まさに蛇に睨まれたカエル?…いや猛獣に睨まれたネズミだなこの場合。


『…あ、ぁ、えっと…すみません、遅刻…しました、黒咲です』


……ってかこの人誰?ものっそイケメンだけど怖いよッ!!目が!!目で人殺せそうだよ!?何か言ってお願いだから!!ジッと見つめられたあと開いた口からは、なんとも似合わない陽気な声が飛び出してきた。けどそれは黒スーツの人が出している声じゃなく、後ろから出てきた…


『う、そ……』

「ヌルフフフ、初めまして」


タコ…のような、黄色くデカイ見たこともない日本語を話すモンスターでした。


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