多分今、私の瞳はこれでもかというくらい開いていると思う……コスプレ?いやいや、それにしてはグネグネと動いている触手はあまりにもリアルすぎる……。え、じゃあなにこれ?なにこの…人?……人と言っていいものなの?モンスター?お化け?怪物?それにしては、なんというか、愛らしい…ドッキリ?ドッキリ大作戦??え、なに、え…「はじめまして。私が月を爆った犯人です」これこれはなんともド直球な自己紹介ですこと。
『えっと、は、はじめまして…?』
「とりあえず黒咲さん、席に着いてくれるか」
『アッハイ』
みかねた黒スーツの人は、黄色い生物を押しのけ盛大な溜息を吐いた後にそう言った。恐る恐る教室へと入った私は、すぐさま水色の頭を見つけて心底安心する。
『な、渚ぁ〜っ!』
「お、おはよ理乃ちゃん、えっと、大丈夫?」
『……多分。…とりあえずまたあとで』
安心から腰が抜けそうになるのを耐え、後ろの席へと着く。それを確認した生物はニンマリ顔のまま口を開いた。
「えー、皆さんはじめまして。私が月を爆った犯人です。来年には地球も爆る予定です。君達の担任になったので、どうぞよろしく」
二度目の挨拶なのだが、担任、その言葉に実感する。開いた口が塞がらないとは、まさにコレを言うのだろうと。ただでさえ働きの遅い脳みそなのに、それを嘲笑うかのように次は黒スーツの人が言葉を投げる。
「防衛省の烏間という者だ。ここからの話は国家機密だと理解頂きたい。単刀直入に言う。この怪物を君達に殺して欲しい!!」
"殺す"その言葉にドクンと心臓が脈打った。ころすって、あの、殺す?私達に?あの人本気で言ってんの?それからの話は、ほぼ頭に入ってこなかった。
ちゃっかり"成功報酬は百億円!"だなんて単語は聞こえてきたんだからイイ耳してるよ。一人一人に支給された、人には無害のナイフと弾をぼんやりと眺める。ナイフケースから出したそれはグニャと曲がるゴムのようなもので出来ていた。
『(これが、あの人に…効くの…?)』
弾に関しては、ただのBB弾にしか見えない。まあでも国家から配られたんだから、本当なんだろうけど。
「君達の家族や友人には絶対に秘密だ。とにかく時間が無い。地球が消えれば逃げる場所など、どこにも無い!」
「そういう事です。さぁ皆さん。残された一年を有意義に過ごしましょう」
『(あんたが言うかそれを……)』
あぁ…、やっぱ休めば良かった来るんじゃなかった。地球がどうとか、暗殺がどうとか、んなもん一般人の私達にどうこう出来る問題のわけがない。百億円だからなんだ、あの男は、烏間さんは、私達に、私に人殺しになれと…言っているようなもんじゃんか。
……マッハ20の生物を殺せたら、の…話だが。
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