長い長い道のりに嫌気がさしている中、何度目か分からない欠伸を一つ、全く眠くなさそうな友人の隣で零す。
「ふふ、本当に理乃ちゃんは朝弱いんだね」
『ん。二年の頃からリズムおかしくなってるままだから。毎朝毎朝、渚のモニコ助かってる。本当にありがとう』
「それは良かったよ。でもまだ殺せんせーが来てから、一度も休んでないよね?」
『まぁね。今週、遅刻した日あったじゃん?学校に連絡入れてなかったからさ。先生が泣きながら心配したんです!!って言われちゃったら、なんだかね』
「…殺せんせーらしいや……」
談笑しながら歩いていると早いもので、いつもの校舎が見えてくる。すると後ろから渚を呼ぶ声がして一緒に振り向く。そこには手を振りながらこちらに向かってくる人物。えーっと確か、杉野くん、だっけ?
「いたいた!渚!おはよ!えっと、黒咲さんだったよな?おはよ!」
『あ、うん、おはよう…!』
「どうしたの杉野、そんな慌てて」
「あぁ!聞いてくれよ、暗殺のアイディア浮かんでさ。何か殺せんせーのこと知らねぇかと思って、今皆に聞いてんだ」
「殺せんせーのこと、か。メモ取ってはいるんだけど、見る?」
『そんなの取ってたんだ、すごいね渚』
「おお、助かる!さんきゅ!……っ!これ、俺のアイディアにピッタリかもしんねぇ。この校舎裏でくつろいでる場所っての連れてってくれよ!」
「え、あぁ、いいけど理乃ちゃん、どうする?」
『んん、私居たらバレちゃうかもだし教室行ってるよ。二人共がんばって』
「おお、悪いな。さんきゅ!」
『ん、また教室で』
二人に手を振り、話し合いながら校舎裏へと向かう背を見送る。…静かになっちゃったなー、さてさて教室に向かうか。ポケットから取り出したウォークマンの電源を入れイヤホンをさして、歩み始める。
あ、そういえば今日水やり当番だっけ。水あげてから教室に行こう、思い出して良かった。方向を変え花壇に向かい、ジョウロに水を汲んでほぼ咲きかけの花にゆっくりと水をまいた。
教室に戻り席でHRの準備をしていると開いたドアの音に自然と目が行く。入ってきた二人は、どちらも浮かない顔をしていて特に落ち込んでいるのは、朝に張り切っていた杉野くんだった。
……失敗しちゃったんだ。にしても、落ち込みすぎじゃない?今まで皆色々と奇襲を仕掛けてきたが尽く失敗に終わっている。何かあったのかな?そうは思っても、私なんかが聞いていいものなのか。落ち込んだ背中を見つめるだけで、入ってきた殺せんせーにより思考は中断させられた。
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