暖かい日差しが私を照らし、眠気を誘う中、必死に欠伸をかみころしたところで誰かが言った。


「皆で奇襲仕掛けてみねぇ?」


その一言ですぐさま始まった作戦会議。都合良く標的の殺せんせーは、北極から持って帰って来た氷でかき氷を作っているらしい。…いいな、私も食べたい。お願いしたら分けてくれるかな。

席で皆の作戦に聞き耳を立てていれば、内容を再確認しているところだった。かき氷を皆で分けてもらえないかと近づいて、油断したところをグサリ、とそんな流れらしい。

私も誘われたが、悩む素振りを見せ遠慮しといた。演技下手くそだからきっとバレる。ココから成功を祈って見守ってるよ、と気合いっぱいな彼等を見送った。

宣言したからには文字通り、成功を祈り見守らなくてはならない。ナイフを後ろ手に隠し、走り去って行く皆の後ろ姿が森の中へ消えて数秒…突然軽い突風が私を襲う。反射的に目をつぶってしまい風が収まったと同時に目を開いた。

その直後に聞こえてきたのは、誰かの怒鳴り声だった。


◇◇◇


「……一つ聞いてもいいか」

『なんでしょう、烏間さん』

「アレは一体何をしているんだ……」


少し引き攣った表情の烏間さんの視線を追い、アレとやらを視界に入れる。そこには木の枝にロープが吊るされており、それにぐるぐる巻に縛られた殺せんせーを生徒達が槍で刺そうとしていたり、銃で狙い撃ちしてる不思議な光景。


『ハンディキャップ暗殺大会……らしいです。皆で育ててたチューリップ、殺せんせーが荒らしちゃったから』

「ハァ、そういうことか。で、君は参加しないのか?」

『私は一般人です。暗殺なんてしたことないし、ナイフも銃も扱ったことも触ったことも無かったんです。私が参加しても足を引っ張るだけです』

「……それはそうだが、あの子達も同じだろう」

『運動音痴だし、……い、まは、計画中です!』

「「今だ、殺れーーッ!!」」


ヌルヌルと、調子に乗って激しく動いていたせいで枝は折れてしまい地面に横たわった殺せんせー。これ見よがしに攻撃を繰り出す皆のヒトキワ大きな声で、なんとなく私達の会話は中止された。助かった。


なんとか屋根の上へ逃げ出した殺せんせーを、唖然と見つめる皆だったが、今までより感じた少しの手応えに喜びを感じているようで生き生きと「殺すチャンスが来る」「殺せたら百億円どうしよー!」と、はたから見ると異常な空間がそこにあった。

それに釣られてなのか、私も小さく笑みを零す。メールの受信を知らせる携帯の画面に気づきもせずに。


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