嘘と本当の、笑顔



どれほど時間が経ったのか、項垂れ瞑っていた瞳。ゆっくりと息を吐けば、少しは落ち着いた気がする。目を閉じたおかげで敏感になった耳は、ラティの怒る声と誰かの……テイサーさんの足音であろう音を拾った。

ラティにも足音は聞こえたようで、ピタリと動きを止めた。数秒の沈黙と、扉の開いた音、階段を降りる音、そこでやっと私は目を開き鉄格子の先へと視線を投げた。


「テイサーさん」

「この野郎テイサーッ!!海楼石を外せ!!」

「おや、もう起きていたかい」


そう、彼はいつも私に向けるような穏やかな笑みを浮かべ確信めいた言葉を放った。ゾクリと、全身に嫌な鳥肌が立つ。


「……なんの、ご冗談ですか」

「冗談、か。そうだねぇ、冗談だと良かったかもねぇ」

「ふざけるな!!ノーラを離せ!!」

「ははは!こんな時でも主の心配か。良いペットを持ったねぇノーラ」

「やめてください。ラティは私の家族です」


声が、震える。どうして、そんなことを言うんだ。聞きたくない、なぜ、どうして、誰か……教えてよ……。


「ふふ、声が震えているよノーラ?信じられないかい?そうだろうねそうだろうねぇ?だって……そう仕向けた……!!」

「仕向……けた……?」

「あぁ、そうだよノーラ。あの日から、どれほどこの時がくるのを待ちわびていたか……!!君には想像もつかないだろう?」


目を細め、限界まで口角を上げ笑ったテイサーさんの笑顔は今まで見たこともないような、そんな笑顔。

彼は何を言っているんだ……?あの日って、この時って何?何が起こっているの……?



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