鬼の子、なんて関係ない。
「どこで野垂れ死んでもらっても、ガープには事故だと報告すればいいと思ってんのに、憎まれっ子世に憚るとはこのとだ。あいつは鬼の子だよ!万が一、政府が嗅ぎつけてみなよ!アタシら一体どんな目に合うと思う?」
「鬼……の、子?」
ポツリとダダンさんの言葉を反復すれば、勢い良く振り向いたエースの瞳はこれでもかというほど、鋭く尖り突き刺すようだった。
数秒睨んだ後、エースは何も言わず外へと足を運んだ。急いで後を追うように、私も外へ出る。
「エース!ねぇ、待ってよ!危ないよ!……待って、気を悪くしたなら謝る!ごめんなさ、ッ!?」
目にも留まらぬスピードで、突然目前にエースの顔が近づいたと思えば、そのまま首を腕で絞められ、押し倒される。絞められ、と言っても息は出来るしゆっくりとなら喋れもする。
「ウザイんだよお前!!チラチラおれのこと見やがって!!文句があるなら言いやがれ!聞いてやるよ!」
「な、文句なんて、何もないよ!別に、仲良くしたかった、だけじゃない!!なのに、無視ばっかりするし!」
「はっ、仲良くだと?……なぁ、お前、海賊王知ってるか?もしそいつに、子供がいたらどう思う?」
……あぁ、"鬼の子"ってそういうことか。どう答えるべき?……いや、考えることじゃない。思ったことを、今は偽りなく話すべきか。彼は多分それを望んでる。
「っ……わた、しは、どうも思わない!わたしは海賊王には、海賊には、なにもされてない!……人は、何かのせいにしないと、生き、られない、ってママが言ってた。そう、いうことでしょ。だから、海賊王に、こど、もがいたとしても、わたしには、関係ないから!なんとも、思わない!……その子は、なにも、悪くない、よ、大丈夫」
その瞬間、彼は私から飛び退いた。突然器官が広くなり、何度か咽せる。喉に手を当て、息を整えながら盗み見たエースの表情は人間らしくて、年相応で、まさに困惑の言葉がピッタリだった。
「……エース?」
「〜〜っ、寝る」
「え、ちょっと……!?」
踵を返し、家へと入って行くエースを呆然と見つめることしか出来なかった。
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