体に聞いてください。



「エー、ス……?」


突然私の前に現れたのは、紛れもないあのエースで、武器を構えながら半身をこちらに向け私に怒鳴った。なんで、どうして、そんな疑問よりも先に、見えない鎖と重りでグルグルだった私の足が動いたのは、静かに振り下ろされた巨大猛獣のおかげだった。


「エース!!!!」


虎に背を向け、少し背の高いエースを腕に閉じ込めた直後に背中への強烈な激痛。吹っ飛ばされた体は、上手いこと木にぶつかり二度目の衝撃が襲う。


「おま、お前何してんだよッ!!〜〜っ弱いくせに!!頼んでねぇだろ!!!」

「し、らない……からだ、が、…うご、…た。え、…す、にげっ、……しんじゃ、ぅ、だ、め……」


弱いことくらい、わかってるよ。私を助けてくれようとしたくせに、なんだかんだ彼は優しいんだ。落ちる瞼に抗う力なんてあるはずも無く、私は簡単に意識を手放した―――


―――浮上してきた意識に、目を開く。見慣れない天井に戸惑い、起き上がろうと体に力を入れたとこで、初めて全身の痛みに気がついた。おかげで色々と思い出す。


「エース……!?」

「なんだよ」


タイミング良く響いた声に驚いたが、ちゃんと無事だったことに涙が出そうになった。


「……よか、った、無事だった、あ、運んでくれたんだよね。ありがとう」

「別に。目の前で死なれちゃ、俺の後味が悪いだけだ」

「うん、ありがとうエース。本当にありがとう」


エースは返事の代わりに隠すことなく舌打ちを零し、私のそばに来たかと思えば小さなオケをすぐ横に置いた。額に伸ばされた手は、布を掴んでいて思いのほか優しい手つきで冷たい布を置いてくれた。


「なんで、」


なんで、助けてくれたの、そう投げかけようとした言葉は部屋に入ってきたマグラさんによって途絶えた。


「おーい、エース……ノーラの様子は?」

「チッ、自分で見ろ」

「あ、エース!……」

「目を覚ましたのか!良かった!」


お頭〜!と叫びながら消えて行ったマグラさんに、苦笑を零す。ダダンさん怒ってるだろうなぁ……。謝らなきゃ、手当てもして貰ってるし、預けられたわけじゃないのに、迷惑かけちゃって。

なんて謝ろうか、ルフィは帰ってきているのか、考えていればいつの間にか、また私は意識を飛ばしていたそうな。



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