強すぎる延長線




「っ、ん……ダダン、さん」

「……起きたかい。あんたもタフな子だねぇ」

「迷惑かけちゃって……ごめんなさい」

「本当だよ。ったく面倒かけやがって」

「たくさん、働かなきゃ」


私の言葉に目を丸くした後、ダダンさんは小さく鼻を鳴らす。ガキのくせに、そう呟いた声は最初に比べてトゲは無かった。


「……手当て、ありがとうございます」

「アタシじゃぁないよ」

「えっ?え、じゃぁ誰が……」

「エースだ」


思わず言葉を失った。あの、あのエースが私を運んでくれただけで無く、手当てまでしてくれていたのか。信じられない、が、嘘ではないはずだ。お礼……言っとかなきゃな。


「まさかあのエースがねぇ。あんたどんな方法で懐かせたんだい」

「い、いや、私は何も……なんででしょう……なんでかな…」

「恐ろしい子だよあんたは」

「あ、はは……。あの、ダダンさん」

「なんだい」

「……ルフィ…は、」

「あぁ……帰ってきてないね」


全身に冷水を浴びたような、そんな錯覚。どれほど、どれほど帰ってきてないんだルフィは?何日経った?


「あんたが五日程寝てたから、もうそんなに経つのか。こりゃ死んだかね」

「いつ、っ五日!?」


そんなに寝ていたという事実にも驚いたが、五日間もルフィは帰ってきていないのか。軽い口調で発せられた、死という単語に血の気が引いていくのを感じた。


「お前がそんな顔してどうするんだい。あのガキはガープの孫だ。死んだと言ったが、どうせくたばっちゃいねぇ」

「ガ、ガープさんそんなに強いんだ……」

「強いなんてもんじゃないよバケモンだ、あのジジイは」

「バケモン……」


バケモノ並の強さを持つなんて、想像つかない。やっぱり世界は広いなと思います。言葉が途切れタイミングが良いのか悪いのか、ぐるると腹の虫が鳴る。途端に顔に熱が集まり、思わず謝ってしまった。


「ハっ、腹が減ったなら元気な証拠じゃないか。待ってな、食いやすいもん作ってきてやる」

「ご、ごめんなさい!ありがとうございますダダンさん!」


その優しさに、じわりと、視界が滲んだ。ルフィ、お願い早く帰ってきて、どうか、どうか無事でいて……!



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