溜息と不器用な優しさ
あまりにも早い眠りに思わず、笑ってしまう。一週間も逃げ回っていたのだろうか、それならまともに眠れていないだろう。静かに救急箱から綿とピンセットと消毒液を取り出す。
消毒液を滲ませ、なるべく起こさないようしみないように優しく傷口に当てる。体中傷だらけじゃないか……。
「(……怖く、なかったのかな)」
私は、あの時ものすごく怖くて……怖くて怖くて本気で死を覚悟した。ルフィは強いんだな、強くて負けず嫌いで頑固で真っ直ぐで、優しい。
見える範囲での手当てが終わり、一息つく。あ、布団の上ですれば良かったとルフィを移動させようとするが……
「いっ……!」
傷がそれを邪魔した。ズキリと響いた背中の痛みに、思わず固まってしまった。よし、転がそうじゃないか、それなら力もそんなにいらないだろうと……思っていた時期が私にもありました。
「あ……エース……ごめ、起こした?」
「……ハァ」
大きく吐き出された溜息に、罪悪感で胸が満ち溢れる。エースは上体を起こし、伸ばされた腕はルフィの腕を掴み雑に布団へと引っ張った。
「あ、ありがとうエース!」
「うるさい。さっさと寝ろ」
無言で敬礼をし、布団へ潜る。隣で聞こえるイビキに、嬉しさが込み上がりゆっくりと瞳を閉じた。これで心配事が無くなったのだ。本当に帰ってきて良かった。
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