油断するべからず



時は過ぎ、あれから三ヶ月。一ヶ月に一度家に帰る以外は、ダダンさんの家に住み着いている状態だ。ルフィが一週間かけて帰ってきた次の日、包帯だらけの私を見て「お前は俺が守ってやる!」なんて大声で言われた時にゃ、惚れるかと思った。

そして、今日。エースが飛び出て行ったのを見送り、その後を追うよう出て行くルフィを見送る。そして私はいつも通り家の手伝いをして二人の帰りを待つ。いつもと変わらない日を続けるんだと、思っていた。


「ちょ!?ルフィ!?!」

「今日はノーラも行こう!!」

「くぉおら、ルフィ!!!」

「あ、あぁ、ダダンさんごめんなさい!!なるべく早く帰って手伝いますからぁああ!!」


やはりルフィも男の子で、力が適うはずもなく引きずられて行く。正直、森に入るのはまだ怖い。エースに稽古を付けてもらおうとお願いしたら、二秒で断られた。だからたまに帰ってくるパパに、教えて貰っている。

川を越え、岩を登り、橋を渡ってと過酷な道をルフィは進んでいく。息切れがすごいけど、ルフィも頑張っているんだから私がへこたれちゃダメだ。


今までの道に比べたら、まだ緩やかな坂道を登る。ルフィと同じように棒を杖がわりにして歩かないと、ぶっ倒れてしまいそうな程には疲れた。


「ルフィ、大丈夫?」

「平気だ!……あ、あれ!」


木の棒を放り投げて、走って行くルフィ。道の先からは光が差し込んでいて、森を抜けたことが分かった。小さくなる背中を追い、隣に立てば見たこともない景色が広がる。


「うっへ〜!なんだここ!」

「何……ここ?」


視界いっぱいに広がる、ガラクタの山。それらに纏わりつくよう、流れている謎の煙……。まさに無法地帯じゃないか。


「よ、っと」

「ちょ、ルフィ!?ダメだよ!!危ない!戻ろう!!」

「やだ!!おれはエースを探すんだ!来いよ!」


身軽だけど、どこか拙い動作でガラクタを飛び越えて下に降りていくルフィ。ルフィを置いて帰るという選択肢はないし、かと言ってルフィが大人しく帰るはずもない。それなら、もう……


「(ついて行くしかないじゃない……)」

「エースーッ!!」

「ちょぉ!?ルフィ叫ばないで!!静かに!」


次々と物の上を飛び、着地した途端崩れた何か。やっとの思いでルフィの側に辿り着き、手を引いた。転がってきた骸骨なんて、私は決して見ていない。


「おーい!!どこ行ったんだよー!!エースー!!……エースー!?」

「だから叫ばないでってぇえ!!」


歩き回るも、エースの姿はどこにもなく前から走ってきた男の人の左手を見て驚愕した。キョロキョロして気づいてない様子のルフィを、後ろから勢い良くこちらに引っぱる。

すれ違い際に「分かってんじゃねぇか、嬢ちゃん」なんて悪い顔で尖ったナイフをこちらに向けて、言わないでください。



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