釣りとため息と涙
魚釣りの最中、小さく小さく息を吐いた。自分でも気づかないほどだったのに、隣のエースは私に視線をよこす。
「溜息なんて珍しいな」
「え、私した?」
「無自覚かよ……」
呆れたように顔を歪めた彼は、ふと自分の釣竿に目を移しニヤリと笑った。私の釣竿を奪って地面へ突き刺し、代わりにエースのを渡され混乱する。手に持った瞬間、ものすごい勢いで引っ張られるそれに急いできちんと持ち直した。
「ちょちょちょ!?エース!?」
「ちゃんと持ってろよー!!」
「お?なんだなんだ大物か?」
横から腕が伸びてきて、エースが持った瞬間安定した釣竿に、どれほどの力があるのかなんて容易に分かってしまう。
一緒に釣り上げた魚はサボの言った通り大物で、思わず歓喜の声をあげる。
「ノーラが釣ったのか!?デッケェ!」
「私じゃないよ、エースだよ!」
「お前に譲ってやるよ」
ニッと笑ったエース、魚の横でヨダレをたらして目を輝かせてるルフィに、そんなルフィを眺めて笑うサボ。
楽しそうな皆を見て我慢なんて、できなかった。
「〜〜っ」
熱くなる目頭にぐにゃりと歪んだ景色、歪んだ三人の姿。ツンする鼻の奥に思わず俯いた。あぁ、嫌だ、嫌だよ帰りたくない皆と離れたくない。俯いたせいで重力に従い落ちる涙は、握りしめたワンピースに小さなシミをいくつも作る。
「ノーラ、なんで泣いてんだよ」
「ど、どうしたんだよ!?」
「どっか痛えのか!?エースに殴られたか!?!」
「殴ってねェよ!!」
止まれ止まれと念じても止まるはずがなく、いよいよ崩れ落ちてしまった私に余計とオロオロしだす三人。ごめん、そうじゃない違うの。
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