さよなら、じゃなくて





涙で顔をぐちゃぐちゃにして、私に抱きついてるサラサラの黒髪を撫でる。つられて泣きそうになるのを、唇を噛み締め耐える。さっき泣くなって言われたばかりじゃないか、ノーラ。


「……また、絶対に来るから。私のこと忘れたりしないでよ?」

「忘れたりなんか、しねェよォ〜ッ!!」

「当たり前だろ!おれ達は兄妹だぜ!」

「また来いよノーラ」


ニコリとはにかんだ二人は私には眩しくて眩しくて、私も小さく笑う。


「ダダン達にもありがとうって伝えといて。……ルフィ、エース、サボ…大好き!!」


やはり耐えきれず涙は出てくる。思いっきり、精一杯の力で三人を抱きしめれば当然のように抱き締め返してくれる温もりがとてつもなく、愛おしい。

後ろからかけられた声に、惜しむよう離れる。船に乗り大きく三人に向かって手を振る。


「皆、またね!!ダダンを困らせちゃダメだよ!!無茶もあんまりしないでね!怪我しすぎるのもダメだから!……元気でね!!」


どんどん、三人の姿は小さくなり見えなくなっても暫く手を振り続けた。絶対に忘れない、楽しくて色々ありすぎた一年間。あっという間だった、一瞬すぎた。


「結婚する、なんて言い出したらどうしようかとハラハラしたぜ」

「あらあら、いい子達だったじゃない?いい友達ね」

「ふふ、ママ友達じゃないよ。兄妹だよ!……パパ、ママ私ね夢があるの」

「踊り子になるんでしょう?」


両隣にいる二人の手を取り、ぎゅっと握る。


「そう、それもだよ!私はね、皆を笑顔に出来る海賊になるの!!ルフィ達と約束したんだ!」

「はっはっは!!やっぱお前は俺の娘だなぁ!俺も昔は海賊だったんだぞ?」

「そうなの?なんでやめちゃったの?」

「母さんに出会ったからだよ」


その言葉に右のママを見上げれば、ほんのりと赤くなっていた。なんだか、それが嬉しくてニコリと笑う。目の前の広い広い、紅く染まった綺麗な海を見つめて思う。いつかこの上を私は冒険するのか、と。

不安と期待と、楽しみが私の胸を昂らせた。いつか、いつの日か私はあの三人のように強くなって三人に並べるような、そんな海賊に―――



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