叫んでも、叫んでも



「ノーラちゃん、誰だ?」

「知りません」

「嘘は良くない。昔そう教えたろ?」

「知りません。この街に知り合いがいるはずありません」

「……そうか」


穏やかな声色で、あの優しい笑顔を貼り付けたまま目の前の男は躊躇なく銃弾を放った。


「ぐッ……ぅアァっ!!!」

「ラティッ!!!いや、そんなラティ!!なんで!!どうして、こんな!!!」

「嘘はついてないみたいだからな、今からその二人に会ってもらう。余計なこと言うなよ?言ったら分かるよな?」

「っ、ノーラ……聞くな、麦わら帽子に、話して、ここから、出るんだ……!」

「犬っころ、俺さっきなんて言ったか覚えてるか?イイコでまてしてろって言ったよな?」

「はっ、おれが、イイコでまてすんのはノーラの命令だけなんだよ、クソ野郎」


ふーん、と言葉の次にまた響いた銃声とラティの呻き声は私をおかしくする。


「や、め、やめて!!!ラティお願いだからやめて!!!やめて、ラティ、ラティを、傷つけないで、」

「ノーラ、やることは分かってるよな?」

「ア、〜〜っ、わかり、ました、従いますから、だから、お願いラティの手当てだけでも、お願い、します」

「ふ、ははは。イイコだ。おい、犬の手当てでもしてろ」

「は、はいっ」


嫌だ、怖い、なんでどうして、どうしてこんな……私はまた、見ているだけ…目の前で大事な人がまた、………また?どうして、今


「行くぞ。これは俺からのプレゼントだ」


手錠を外す前に、彼は鉄枷を私の首につけた。あぁ、海楼石か……床からの固定を外しされるがままに歩く。「泣いてちゃァ怪しまれるじゃないか、ノーラちゃん」とテイサーの言葉に心臓を鷲掴みにされたような感覚に陥る。

無理にでも涙を引っ込ませ、唇を噛めば切れてしまったようで、舌の上に鉄の味が広がった。……あぁ、きちんと、笑えるのだろうか。ラティはちゃんと手当てしてもらったのだろうか、


「さぁ、着いたよ。会っておいで?少しでも変なことしてみろ。君の大事な大事な家族の命は……ない」


生きた心地が全くしない―――



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