ゴムだから。
男に背を向けたまま床に座り込む。銃声は止み、あたりには硝煙が立ち込めていた。怖くて男の方なんて向けたものじゃない。私のせいで、彼は―――
「効かぁあああんッ!!」
「え」
上から聞こえた声は紛れもなく、麦わら帽子の男の声で振り向けば、両手を広げ銃弾をその体でゴムのように跳ね返しているところだった。
「な、……ゴム、ゴムの…実……?」
「にっしっし」
「チッ、ゴムゴムの実の能力者か!!くそ!おい、ノーラ!!」
海兵達のざわめきの中、ハッキリと聞こえてしまったテイサーの声にビクリと肩が震える。緑の男が刀を抜き、麦わらの男が腕を振り上げたのを見て声を張り上げた。
「やめてッ!!!」
「くく!来なさいノーラ」
行きたくないと、心は叫んでいるのに体は麦わらの男を押し退けテイサーの元へ走る。手錠を付けられ、男達に見せつけるようテイサーは私の頭に銃を突きつけた。
「ノーラ、なんで!!!」
「ラティが捕まってるの……!」
「余計なこと言うな。おい、麦わら!!この女がどうなってもいいのか?良くないよな?だからわざわざこんな所まで来たんだろ?」
「この人達は関係ないでしょ!?」
「うるせぇ!!黙れ!!」
容赦なく銃で頬を殴られ、口の中が切れる。唇の次は口の中かと笑う。
「ノーラに手出してんじゃねェ!!おれが守るって誓ったんだ!!!!」
「―――ッ!!る、ふぃ……?」
どこかで聞いた、私に向けられたその言葉に一人の名前を呟いた。その瞬間頭が割れるような鈍痛が私を襲う。あまりの痛みに蹲りそうになる私の髪を掴み、立ち上がらせようとテイサーは上へと持ち上げる。
物凄いスピードで頭の中に入って来たのは、過去の記憶。ルフィ、エース、サボ、ダダン達と過ごした一年間。そして、死んでしまうまでの父と母と過ごした記憶。
「ぁ、う……ル、フィ……!!」
「…やはり知り合いか。どういう関係だ」
「……私の、弟…よ」
その言葉に、テイサーとゾロと言う名の男の声が重なった。
「弟だと?あの時、お前の家族は殺したはずだが」
「殺……した……?」
「あぁ、そうだ。俺が殺せと命令した―――」
冷水を全身に、ぶっかけられたように体は凍りついた。
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