こんにちは。




どれほど時間が経ったのか、踊りを終え後ろを振り向き驚いた。お客さんが一人……いや、一匹いたから。私を見つめ長い尻尾をゆらゆらと揺らしているその子は、狼だろうか。

まだ子供のようで、私の膝くらいの大きさだ。驚きで目をぱちくりさせていたが、その場に座り口を開く。


「初めまして狼さん」


座り込んで手を伸ばせば、睨まれるような瞳に少し怯える。うーん、ダメか……なら、


「〜〜♪〜〜〜♪」


ゆるりと好きな歌を口ずさんだ。ピクリと動いた耳に、また揺れ出した尻尾。うん、とても可愛い。あ、そうだ!


「狼さん、これ、一緒に食べる?」


ポシェットから取り出したクッキーを一つ砕き、私と狼さんの間に投げた。警戒するように見つめていた狼だが、私が同じものを食べているところを眺め近づき匂いをかいで一口。

美味しかったようで、もう一つと言うように私に近づいてきた。うん、ママのクッキー美味しいよね!知ってる!


「お腹すいてたんだね、いっぱい食べていいよ!」


袋を広げ私もまた一つ食べた。甘すぎない味が口いっぱいに広がり、幸せな気分になる。いつの日かどうしてこんなに美味しいのかと訪ねたら、私のことを想って作るからだと微笑まれた。

クッキーはあっという間に無くなってしまい、袋を畳みポシェットにしまう。


「ねぇ狼さん、私とお友達になってよ」


なんて言ったも分からないかと、思わず笑ってしまえば狼は応えるように腕に擦り寄り舐めてきた。その時の嬉しさと言えばもう、なんと表現すればいいのか……。

花冠を取り、狼の首に掛けてやる。


「あげる!友達になってくれたお礼!よく似合ってるよ」


どこか嬉しそうに尻尾を揺らした狼は、また足に擦り寄って走り去って行ってしまった。森の奥に住んでたのか、お腹がすいて出てきちゃったのかな。

追いかけようかとも思ったが、パパに森には絶対に入っては行けないという約束をしたので、願いを込めてまた明日ねと呟いた。



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