物々交換?
先程まで一人じゃなかったため、急に寂しさが込み上げてきた。花を潰さないよう座り込み、狼さんを思い浮かべながら小さめの花冠を作る。
ふと、音がしたかと思えば目の前に見た事のないフルーツを置かれた。
「あれ……狼さん、これ……くれるの?」
そう問いかければ鼻先でフルーツを私に押し付ける。正直に言わせてもらうと、すごく……すごく不味そう。変な柄は毒を連想させて食べることを躊躇するレベルだ。固唾を呑んでフルーツと狼さんを交互に見つめて、覚悟を決めた。
「せっかく持ってきてくれたんだもんね、よし……いただきます!!」
恐る恐る、一口かじればあまりの不味さに固まった。
「ぅ……ぐ…〜〜っ、うん、おいし!うん!美味しいよ!ありがとう!」
変な汗をかきながらも、完食した。そっと狼さんに手を伸ばし、小さな頭を撫でた。良かった、嫌がられない……人懐っこいのかな?
それから数時間、一緒に過ごし日が暮れれば帰らなきゃいけない時間。そっと撫でてやり帰らないといけないことを伝えれば、手のひらに擦り寄った狼さんも森の奥へと足を進める。
「ま、また明日ね!!」
私の言葉にふわりと尻尾を揺らし、走って行った。見えなくなるまで後ろ姿を眺め、私も帰路に着く。
ただいまと家の扉を開けば、朝とは違ういい匂いが漂っており今までなんともなかった腹の虫が急に暴れ出すのだった。
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