これは夢でしょうか?
晩御飯を食べて、お風呂を済まし自室で濡れた髪をふく。毎度毎度思うが、乾かすのが面倒だ。こう、風がビュンってなってこう……
「一瞬で乾かないかなぁ……えっ」
そう言い、風の音が聞こえたかと思うと口に出したことが本当に起こって固まる。
「え、あ……え?」
もう一度自分の髪に触れれば、先ほどとは違い乾いてサラサラになっている毛並みにとてつもない焦りと戸惑い。
ふと記憶の引き出しから出てきた、悪魔の実という単語に一人の少年を思い浮かべた。そういえば、あの子もそれを食べてゴムのような体を手に入れてた……まさか……。
急いで部屋の窓を開き、近くの木を見つめる。風は、一切吹いていない…そっと手を木に向けて軽く振り払えば、ガサガサと揺れた木。舞い落ちる葉……あぁ、
「あの狼さんが持ってきたの、悪魔の実だったんだ……」
なんとも言えない気持ちが私の心を駆け巡る。悪魔の実だなんて、私には遠い世界のことだと思っていたのにこんなあっさりと自分に降り掛かってくるなんて思ってもみなかった。
けど一つ。少し期待していることがある。それは、この力があれば私もあの子達みたいに多少は強くなって近づけるかもしれないということ。
私はあまりにも、弱すぎるから…鏡に映る、背中を見つめた。服に隠れているから見えないが、三本の爪痕が大きく残っている。
勲章だなんて、カッコつけたことを言ったが私が弱い証でもある。だから、次会う時までに力をつけて驚かせるんだ!
そうと決まれば早く寝て早く起きて、お花畑へと出掛けなきゃ!窓を閉じ、電気を消してベッドに潜る。楽しみが増えて、零れた笑みにそっと目を閉じた。
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