落ちる体



部屋に荷物を預け、テイサーさんの好きなアップルパイを焼いた。そろそろ時間かと、宿を出る。約束の15分前、海兵の男が二人、既に待機していた。軽く会釈すれば案内するかのよう右手を流し、歩き出した。


「本当に行くのか?ノーラ」

「今更何言ってるのよ。当たり前でしょ」


ムスッとしているラティに苦笑を零し、歩みを進める。10分ほどで基地には到着した。案内してくれた海兵さんにお礼を告げて、中へと入る。
いい匂いが鼻をつき、小さく腹の虫を刺激する。机の上には豪勢な食事がたくさん並んでいた。


「わぁ……!すごい!美味しそう!」

「やぁ!来てくれてありがとう。君とラティ君のためだ。たくさん食べてくれたまえ」

「ありがとうございます!あの、これ。テイサーさんアップルパイが好きだって仰ってましたよね?お口に合うか分かりませんが……」


バスケットに入ったアップルパイをおずおずとテイサーさんに渡す。驚いたように目を見開き、すぐにそれは笑顔へと変わった。


「覚えていてくれてたのか!嬉しいよ。後で一緒に食べよう、ありがとう」

「い、いえ!」

「さぁ、冷めてしまわぬうちに」


バスケットを部下の方に渡し、席へとリードされる。どこぞのイタリア紳士かと疑うほどの待遇に、慣れなくて恥ずかしくて照れてしまう。


「あ、ありがとうございます」

「どういたしまして。さぁ、ラティ君も座って」

「……あぁ。なぁ、この花なに」

「ん?あぁ、綺麗だと思って飾ったんだが、なんと言ったかな。気になるかい?」

「別に。匂いがキツイだけ」

「そうだった、君は鼻が利くんだったね。すまない。すぐに下げさせよう」

「あー、いや、いい」

「……そうかい?」


席に着けば、一層いい香りがして気分が上がる。こんな豪華な食事をするのは、きっと初めてだ。ラティもあまり表情に出していないが、心做しか嬉しそう。いただきます、そう言って目の前の高級そうなステーキを口へと運んだ。



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