銀時/微甘

※微々裏


うつらうつらと瞼が閉じては開いてを繰り返す。異常に重たく感じる頭を、漫画に夢中になってる隣の銀時の肩へと預けた。

時折撫でてくれる銀時の優しい手つきが、余計に眠りへと誘う。あぁ、このまま寝れる……気持ちよく意識が飛びそう、そんなところでバンッ!!というドデカイ音が部屋を響かせた。

これでもかってくらい驚いた。眠気なんてぶっ飛んだわ。バクバクと脈打つ心臓に手を当て、音の原因を見つめた。


「びっくりしただろ、怪力娘!!」

『どしたの、神楽ちゃん……』


原因は神楽。真っ白な細い腕を細い掌で机を叩きつけた音だった。神楽の表情は俯いているため全く分からない。


「ずっと遊乃に聞きたかったことがアルネ」

『えっ、な…なに……?』


勢い良く顔を上げた神楽ちゃんは、眉根を寄せて真剣に私を見つめる。


「どうして遊乃みたいな良い女が!!こんっっなクルクルのクソテンパで甘党ニートなクソ男と付き合ってるアル!!」


効果音が付きそうなほどの速さで指さした先は、神楽ちゃんの言うクルクルクソテンパ甘党ニート男こと、私の恋人である銀時。

神楽ちゃんの言葉に飲んでいたお茶を吹き出し、誰がクソテンパのクソ男だ!と反抗している。まあまあ、と銀時をなだめて神楽ちゃんを見つめ返した。

私が話だそうとしたのが分かったのか、途端に銀時もソワソワしだす。本人が居る隣で言うのは恥ずかしいが仕方ない。


『銀時はクソ男なんかじゃないよ』

「その他もろもろは否定しないわけですかコノヤロー」

『あっ、ごめんて、銀ちゃんの髪も柔らかくて好きだよ!甘党なのも「イチャつくな!早く答えるアル!」アッハイ』


銀時に触れようと伸ばしていた手を引っ込め、膝の上へと戻す。改めて神楽を見つめては、私は口を開いた。


『私は神楽ちゃんの言う良い女じゃないけど、なんで付き合ってるか…だよね。なんでかな、まあ、確かに普段はちょっとアレだけど…さ。銀時ってば、馬鹿がつくほどお人好しでね。本当に困ってる人のこと放っておけないんだよ。なんだかんだ助けちゃって助けた人を必ず笑顔にする。

あと、銀時が本気出したらめちゃくちゃカッコイイ。私のことすごく考えてくれてるし、こう見えても銀時は本当に優しい人だよ。まぁ、そんなとこに惚れてる』


ふわりと笑って見せれば、キョトンとした表情から一変して不機嫌そうにそっぽ向き唇を尖らせた。なんでや。


「やっぱ銀ちゃんに遊乃は勿体ないアル」

「んなこと俺が一番分かってんだよー!!とりあえず遊乃お前はこっち来い!!」

『ぇあ!?えっ、ちょ、銀時!?』


突然私を担いで部屋を出ようとする銀時。出る際に「絶対俺の部屋来んなよ!」そう神楽ちゃんに釘を刺して扉を閉めた。いくら名前を呼んでも反応しない代わりに見えた耳は、真っ赤に染まっていた。

銀時の部屋に着きベッドに降ろされては、そのまま押し倒される。


『ぎ、銀時……!』

「ったく、ふざけんじゃねぇよ」

『……事実を言ったまでだよ。銀時、好き』

「っ…わりぃ、おじさん欲情しちまった」

『えっ、やっ、い、今昼!神楽ちゃんも居る!』

「そんなこと分かってますよバカヤロー。俺は悪くねえよ、お前が悪い」

『そんなこと言わ、っれて、も……』


思わず視線を逸らしてしまった。頬杖つきながら優しい瞳で私を見つめて、ゆっくりと頬を撫でる銀時があまりにも、あまりにもカッコよすぎて。


「抱かせろ」


ゾクリとした。耳元で低く響いた銀時の声に、厭らしく太ももを撫でるその手つきに、記憶の中の快感が蘇る。「遊乃」名前を呼ぶその声はまるで媚薬のようで、私の理性など一瞬で吹き飛び去った。


『っ、ぎん、とき…キス、して……』

「ったく…本当にお前は、俺を煽る天才だな」

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