if 10年後(2)
※うろ覚え
霞む視界に、隠さず舌打ちを打った。最早気力だけで立っている状態だ。もうどこが痛いのか分からないくらい、全身が痛い。血を流しすぎているのか貧血でふらふらする。自分の弱さに今度は、笑いが零れた。
「まだ……やれる」
「十年前の遊乃先輩もキュートですねー」
「おいクソ蛙。何気安く俺の姫に触ってんの?」
なんの気配も無く突然響いた後ろからの声と腰に回された誰かの腕、思わず肩が震え咄嗟に距離を置き構えた。
「おぉー!あれだけ怪我してるのに流石の身のこなしといったところでしょうかー」
「シシッ、いつもの遊乃なら気配に気づいてたろうけどな。んで?俺の姫にここまで怪我させてくれちゃったお礼しないとじゃん?」
「ンフフ、そうねぇ!たっぷりお礼しなきゃねぇ!」
「あ、……ヴァリアー……?」
アッタリー、なんて歯を剥き出しにして笑う金髪男はきっとベルフェゴールだろう。ティアラがその証拠だと思う。十年も経てばあんなに背も高くなるんだ……。
……あんな蛙ヴァリアーに居たっけ?新しいメンバー?いや、今はそんな事どうでもいい。戦力が、増えたんだ、それもとびきりの戦力……
「っぶね!……おいおい」
「気失っちゃいましたねー」
「う"ぉおい、情ねぇ」
「安心したのかしら。可愛いわねぇ!」
暗くなる意識に、勝てる力も残っておらず誰かの腕の温もりだけが私を包んでいた。