if 10年後
フードを深く被り、抑えられない笑みに頬が上がる。会えるんだ。10年前の姿と言えど懐かしい貴方に。
簡単に侵入出来た基地に、不安が募る。こんなセキュリティで大丈夫かよ……。
耳に響く不快な警告音は、鳴り止むことを知らないらしい。そりゃそうだ、侵入者を知らせる為のものなんだから。
「こっちか……」
走って数分も経たぬうちに、大きな扉の前にたどり着く。気配はここから。一歩足を踏み出せば、自動で開いたドア。
その先には険しい表情をした幼い懐かしい顔ぶれ達。
「久しぶりですねぇ、十代目」
「チッ、消え失せやがれ!!」
「あぁーあ、遅いよ」
隼人が投げるよりも先に近づいて、導火線を切り火を消す。驚いてる隼人の顔面めがけて蹴りを繰り出した。
「ほら、危ないよー!」
「クソっ!!」
なんとか両手でガードした隼人は、数歩よろめく。すぐに体制を立て直し、こちらに向かってこようとするのを、懐から取り出した拳銃を向けて阻止する。
「動いたら打つ」
もう一つ取り出した拳銃は、ゆっくりと十代目に向けた。シン、と静まり返った部屋には緊張感と殺気だけが重苦しく充満している。
「ふ、あはは!おかしい!ダメだ!」
「テメー何笑ってッ!!」
「隼人、蹴っちゃってごめんね?痛かったでしょ?」
「あ?!なんで俺の名前!!」
耐えきれずにいまだに笑い続ける私に、隼人は怒鳴り声を浴びせる。拳銃を仕舞いゆっくりとフードを取った。
「な、ぁ……遊乃さん!?」
「十代目……!!」
「ちょわぁあああ!!!ちょ!!え!!」
生きてる、十代目が。過去の姿だけど、沢田綱吉という人間が、今私の目の前に居るんだ。突然私が抱きしめたもんだから、戸惑っていた十代目だが、肩を震わせる私を見てゆっくりと背中を摩ってくれた。
「十代目、すみません。本当にすみませんでした。あの場に私が居れば少しは何か変わっていたかもしれません。なのに、」
「あ、謝らないでください!きっと遊乃さんのせいなんかじゃないですよ!!て、ていうか!遊乃さんに敬語使われると落ち着かない……」
「……ふ、十代目はいつも優しい。ありがとう十代目。私がここに来たのは分かってると思うけど、貴方達の戦力をあげるためよ。あぁ、十代目、これ過去の私が来たら渡してほしいの」
鍵のついたネックレスを外しながら、小さな箱とネックレスを渡す。頷いたのを確認してニコリと笑った。
「あまり時間はないけど、私の知ってること、私の経験は全て伝えるつもりよ。あと、あんなセキュリティじゃ今度は本当に敵に侵入されるわよ」
そしてまた、十代目に向き直り私よりも少し背の低い彼を見つめる。
「今度こそ、お守りします十代目」