ふいに香る甘いそれ/アレン

※(微)肌色



「おいで」


自室のソファーの上、彼は優しく微笑み優しくそう言った。白の長袖に黒の緩いスウェット、少し濡れた髪、こちらに向けられた右腕。

ドキリと、心臓が鳴った。引き寄せられるかのように踏み出した足は、ゆっくり彼へと近づいて行く。長い腕を私の腰に絡め、そのまま抱きしめる。

彼の足を跨ぐように膝立ちのままの私は、お腹あたりにある彼の白い髪を撫でた。


『…あ、アレン』

「なんですか」

『……恥ずかしい』

「タオル、巻いてるじゃないですか」

『そう、だけど……』

「これからもっと恥ずかしいこと…するんですよ?」


そう言って私を見上げたアレンは、怪しく笑った。なんだか最近のアレンは…なんというか、こう、大人になった……気がする。前なんて、私がお風呂上りにタオル一枚で出て来たものなら、顔を真っ赤にして慌てて後ろを向いていたくらいなのに。


『……昔はウブだったくせに』

「…そうでしたっけ」

『そうだよ。…アレンのくせに』


私の言葉を返すかのように、アレンは私の右手の甲に唇を落とした。ぴく、と指が反応する。それを笑うように唇はリップ音を立てながら、指へとおりてゆく。反対の手は、割れ物を扱うようなそんな手つきで太股からふくらはぎへと往復を繰り返した。

ゾクゾクと軽い電流が背筋を走る。たった、たったこれだけなのに。…やっぱりアレンのくせ……


『…生意気』

「ッ!」


完全にアレンの膝の上に座り込み、アレンの両手をソファーに押し付けた。少し驚いてこちらを見た瞬間に唇を押し付ける。ぬるりと舌を挿入しては、絡めてなんとか主導権を握ろうとする。


細められたアレンの瞳。


『(あ、ヤバイ……)』


時既に遅しと言ったところか。あまり強く押し付けていなかった腕は、簡単に抜けられてしまいすぐに後頭部へと回される。その瞬間に犯される口内。


『んぅッ…!』


思わず漏れ出る声、吐息。まともに息が吸えるようになったのは、私がキスだけでヘロヘロになった時だった。


「生意気な僕に骨抜きにされる気分はどうです?」

『……ノーコメントで』

「残念。ではラズアの体に聞かせてもらうことにします」


ニッコリと笑ったアレンは私を簡単に抱き上げ、優しくベッドへと運んだ。私を跨いで前髪をかきあげるその仕草に、また、心臓がドキリと鳴った―――

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