カルマ/微裏


急に飲みたくなって、衝動のまま買ってきたお酒を机に置き、帰り道たまたま会(拉致)ったカルマにテキトーに座ってと伝える。何度目か分からない溜息をつきながらも、付き合ってくれてるカルマはイケメンで本当に優しい。

食器棚からコップを二つ用意し、氷を入れてカルマと私の前に置いた。袋から酒を取り出しコップに注ぐ。トクトクと響く音はなんとも心地が良い。


「ねぇ、それお酒だよね。中学生に飲ます気?」

『もうあんた高校生になるじゃない』

「何その無茶苦茶な理由」

『いいのいいの!それに男は酒に強くなきゃモテないよ?今から練習!』


注ぎ終えたコップを強引にカルマに差し出す。先程も聞いた溜息を零すが、受け取ってくれる。カツンと部屋に音が響いてカンパーイなんて楽しんでるのは、多分私だけ。


◇◇カルマsaid―


「…もう、ベロベロじゃん」


ビンの酒を二本、俺が一本飲んでる間にお姉さんは飲み干した。そして梅酒をロックで一杯飲み終わった時には、頬は赤く染まり目がトロンとしだした。それだけでも理性が飛びそうなのに、普段のお姉さんからは絶対にありえない舌っ足らずときた。

隣でキャッキャと騒いでるこの人は、俺がすり減る理性と戦ってることなど、つゆ知らずだろうな。思考を止めるようにカチッと音がしたと思えば、鼻につく独特の匂い。


『飲んでる時に吸うと、酔いがまわるんだってぇー』

「……酔いたいわけ?」

『あったりまえじゃん!飲むなら酔わなきゃ!まだまだ飲み足りない』

「もうじゅうぶん酔ってるよ」

『え、カルマ酔ったの?男のくせにー!』

「はぁ?!酔ってるのはお姉さんでしょ。俺は酔ってないよ」


それから返事がないため隣を盗み見る。思わず言葉に詰まってしまう、あっつー、そうぼやきながら後ろのベッドに頭をあずけ胸元をはためかしていた。そのたびに見えてしまう胸の谷間から即座に目をそらす。

…俺も男だってことをこの人は分かっていない。意識されてないから、こんな無防備なことが出来る、そう思うと悔しくなってきた。意識してるのは俺だけ…ね。


「俺さぁ、結構負けず嫌いなんだよね」


◇◇遊乃side―


負けず嫌いなんだよね、と突然言い出したカルマを不思議に思い目を開けようとしたがそれは叶わなかった。耳元でシュルっという音と共に暗くなる視界と少しの圧迫感。右手に持っていたタバコを奪われクシャリと火を消す音。


『…カルマ、なんで目隠しすんの』


目隠しを取ろうとした右手を捕まれ、左手と一緒に頭上へ固定される。上に跨る気配に、完全に暗くなる視界。名前を呼んでも無言のまま、腕もビクともしない。


『ね、ねえ、ちょっとカルマッ!なんのつも、ひっ、あッ』


言葉途中で鎖骨辺りにヌルッとした感触が、ツーっと首筋を這う。目隠しをした挙句酔っている体は敏感で簡単に浮く腰。耳を甘噛みされ、ヌチュ、と卑猥な音が頭に直接響く。空いている方の左手は触れるか触れないかのもどかしい位置で、ゆっくりと、首から胸、腹から腰と撫でまわす。


『かる、まッ…あっ、…やッ!、かる、ま…やめなさッ!…んん』


言葉途中で塞がれた唇は、いとも簡単にカルマの舌の侵入を許した。熱いカルマの舌が私の口内を優しく犯す。


『んぅっ、は、…ん、ぁ』


やだ、なに…これ、どこでそんな舌遣い覚えたの。あまりの上手さに何も考えられなくなる。顔を背けようとも顎を掴まれているため出来ない。……もはやそんな気力も完全に奪われてしまっているのだが…どんどん深くなるキスに息を吸うのがやっとだった。

『る、ま…く、るし』


カルマ、苦しいと伝えたかったが角度を変え激しいキスの中口から出たのは、これが精一杯だった。伝わったのか舌を吸われながらカルマの唇は離れていく。自由に酸素が吸えるようになり、肩で息をする。


『はぁ、…は、カルマ、なんのつもり』


問いかけてみるが返事は無くて、代わりに目の圧迫感が消え光が戻る。突然暗闇から眩しくなった目を開けずにいると、影が出来る。おかげで軽く開けた目に飛び込んできたのは、赤色の髪と眉間にシワをよせたカルマの表情。

…そのカオは私がしたいくらいなのだが。というかこの体制はなかなかに腰が痛い、あと首。そう思っているとエスパーなのかと聞きたくなるタイミングで体が浮いた。そのまま優しくベッドに寝かされ、また私の上に跨るカルマ。なんなんだ、何をそんなに不機嫌なのか、


「……遊乃、無防備すぎる。あんたからしたら俺はガキかもしれないけど、一応男なんだけど。…襲うよ?」


耳元で囁く色気を含んだ声色に鳥肌が立つと同時に、顔に熱が集まるのを感じる。こんのマセガキがふざけんな悔しいカッコイイ!!むかつく!

私だって負けず嫌いなんだ、覚えとけ。グッとカルマの胸ぐらを掴み引き寄せる。ピタリと頬をつけ耳元で甘えるように言ってやった。


『オオカミさん、襲ってみなよ?』

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