if FF9


―――もしも、この世界に"神様"とやらが居るのなら、是非とも私に教えて欲しい。どうして、こんな"世界"に私という人間を産まれさせたのかを。
どうして、私がこんな思いをしなければいけないのかを。私が何をしたって言うの?私なりに必死に足掻いて足掻いて生きてきたし、努力もしたつもりだ。それでも足りないと言うのですか?

だったら私は、こんな、世界など―――


―――『…ハ、ァッ……!!!』


長い間、呼吸を忘れていたかのように、突如入ってきた空気は苦しくて勢いよくむせてしまう。目に飛び込んできた天井には見覚えが無く、思考を巡らせていると、左手に突然の強い違和感。

視線だけをずらすと私の手を握る誰かの手。その手をなぞるように滑らせ、たどり着いた碧い瞳はこれでもかというほど見開かれていて、ついでに形の良い口も開いていた。

私が言葉を発するよりも早く、彼は眩しいくらいの金色の髪を揺らし部屋から飛び出した。ゆっくりと上半身を起こす。数分も経たぬうちに金髪の彼は大きなガタイの良い一人の男を連れて戻ってくる。


「ラズア、心配かけやがって」


私の目を見て男はそう言ったのだから、恐らく私の名前はラズアなのだろう。「俺のせいだ」と俯く金髪の男、それに対しガタイの良い男は「ジタン、オメェのせいじゃねぇ」そう呟いた。
金髪くんはジタン、と言うのか。ガタイの良い男はなんというのだろうか……というか、


『…あ、の……ココ何処ですか』


なんとも弱々しく響いた声だが、静かな部屋にはじゅうぶんに聞こえたようで、私の言葉を聞いたジタンさんは弾かれたように私を見た。


「お、おい…ラズア、冗談キツイぜ……?」

『……冗談だと、言えたら…あなた方のそんな苦しそうな表情を見ることは、無かったんでしょうね』


きっと、私の知り合いなのだろう。あまりの苦痛の表情を見ていられなくて、そっと視線を外す。この場には似合わない不意の大きな笑い声。


「そうか、記憶を無くしちまったか。だったらまた思い出を作りゃいい。ラズアなら思い出すさ。よく目ぇ覚ましたな…待ってたぞ」


大きな温かい手のひらが優しく私の頭を撫でる。鼻の奥がツンとしたかと思うと、滲む視界に溢れる涙。あぁ…私にとってこの人はとても大切な人なんだ、だって心がそれを覚えてる。また大きく笑った彼は「まずは体力だな。飯の準備だ」そう言って出て行った。


「……やっぱボスにゃ適わねぇな。悪ぃラズア、少しだけ我慢してくれ」


何を、そんな問い掛けはいらなかった。優しく、けれど力強く抱きしめられたこの行為を我慢しろと彼は言ったのだ。嫌な気持ちなど微塵も感じない。彼もまた私にとって大切な人なのだろう。

小さく小さく訴えるかのように、「本当に良かった」と呟く彼の背中を撫でるくらいしか、今の私には出来なかった。

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