銀時/甘
夜も更けて町も静かな午前二時過ぎ。小さな呻き声で私は目が覚めた。ぼんやりとした頭と耳は最初こそ何も働かなかったが、もう一度聞き覚えのある声が呻く。
「……銀ちゃん…?」
上体を起こし暗がりの中、銀時の表情を伺えばそれは苦しそうに眉根を寄せ額には大量の汗。完全にうなされている。
そっと肩に手を当てその体を揺する。何度も名前を呼びながら。頬に手を宛がおうとしたその瞬間、暗闇に慣れた視界は反転しよく見慣れた天井と鋭い目付きで私を睨む銀時に、喉には銀時が愛用してる木刀の感触。
「……銀時、私だよ。大丈夫だから」
「ぁ、〜〜〜っわり、」
すぐさま木刀を放り、彼は深い溜息を吐き出した。先程とは打って変わって弱々しい表情で私を見つめる。
そっと首元へと腕を回しゆっくりと引き寄せ、銀の頭を抱き締める。
「大丈夫。大丈夫だよ、銀時」
ぴたりとくっついた胸からは銀時の速い心音を感じる。それは徐々に落ち着き、同じように銀時の呼吸も緩やかになっていく。
「はは、情けねぇ」
「そんなことないよ。銀時が情けなかったら私なんて腰抜けの腑抜けのマヌケだわ」
「なんだよそれ」
小さく笑った銀時に釣られ私も微笑む。良かった、笑ってくれた。私の腰を抱き銀時はそのまま横に寝転がる。
鎖骨あたりにかかる息が擽ったくて位置をずらそうとすれば、離すまいと力が強まった。
「なぁ、」
「ちょっ、そこで喋んないでよ」
「どこにも行くなよ」
身をよじる私の動きを止めるには充分の言葉だった。銀時は強い。それと同時にとても弱くて脆くて臆病なとこもある。弱ってる姿があまりにも愛おしくて、思い切り抱き締める。
「あら、銀時が離さない限り私はどこにも行かないわよ?」
「ふっ、そうでした。なら安心だ」
銀髪に唇を落とせば、上がってきた彼の手は首裏を掴みやっと見えた銀時の表情は優しくて胸が鳴る。軽く触れた唇は暖かかった。