ひより様リク/カルマ
おかしい。何かが、おかしい。何がおかしいって、カルマがおかしい。そう、私の家に来た瞬間から。
いつもなら家に来る前には必ず、メールなり電話なり入れてくるのだが今日は違った。突如鳴ったインターホンのドアを開くと、ムスッとしたカルマがそこには立っていた。
驚く私をよそに、無言で手を引かれてはベッドに座らされ、そのまま膝枕。正直戸惑いしかないわけだが…頬をかいて、とりあえずカルマの頭をゆっくりと撫でた。
「…遊乃」
あぁ、何かあったんだ。カルマが私を呼び捨てにするのがその証拠。現にカルマは私の腰に手を回して、ゆるりと力を込めた。お腹に顔を埋めてはもう一度私の名を呼んだ。
『なに、カルマ』
「遊乃」
『うん』
「遊乃」
『ここにいるよ』
「遊乃、好き」
『ん、私も大好き』
もそりと擦り寄るカルマが愛おしくて愛おしくて、緩む頬を抑えきれずに真っ赤な髪を何度も撫でる。カルマが甘えてくるなんて、珍しい…。相当悔しいことでもあったんだろうか。
そういえば、テストがどうとか言っていた。余裕ぶっこいてたけど、もしかしてソレのこと……?
「余計なこと考えなくていいから、俺のことだけ考えてよ」
思考を巡らせていたせいで、撫でる手が止まっていた。気づいたカルマがその手を握り絡めて来たかと思うと、今度は起き上がり首元に縋り付いてくる。
『わわ、カルマ!分かった分かった…!』
体重をかけられたせいで、そのまま後ろへと倒れるが、頭はカルマが手で庇ってくれたため痛みはない。本当こういうとこイケメンだよね。
何度か、カルマの背中を摩っているとボソリと彼は呟いた。
「あー、このまま襲いてぇー」
『は…、はっ!?』
「ふ、じょーだん。今は遊乃ちゃんにくっついてたい」
『(今は、かぁー…)』
「……俺さー、油断してたんだよね。余裕ぶっこいてた。それが……カッコイイ、って、思ってたんだよね。本トだっせぇよな」
『……んー、そっか。でも油断してたって気づいたんだから、そう思えたんだから成長じゃない?次は油断しなきゃいいんだよ。余裕、ぶっこいてなきゃいい話。カルマは負けず嫌いだからね、次も同じことはしないでしょ?多分、悔しい思いをした分、カルマは誰よりも頑張る。そんな人だよ』
すぐ横にあったカルマのおでこに、軽くキスを落としてやる。よしよし、と頭を撫でては大丈夫だよと零した。
「遊乃、やっぱ襲うわ」
『なんでや!?』
「本ト、俺、遊乃には一生敵わない。ね、好きだよ」
『わ、たしも!好き、だけど!ちょ、ま、やッ、あ、ちょ、こら!カルマ!…んぅッ!』
(スライディング焼土下座)