困ったように、だけど、どこか嬉しそうに私は笑った。目の前の華奢な少女の震える肩を抱き、思わず頬をかいた。けれど、本当に困ったな。女の子の涙には弱いのだ……なんてどこかの男が言いそうな台詞だが、事実なんだから仕方が無い。それに泣かせてしまった原因は、この私にあるのだから―――


―――事は何ヶ月ほど前
突然ゴーレムに無線が入った。食事中だった私はおかげで豪快に噎せた。このゴーレムもとい、アンに連絡を入れられるのはたった一人しかいない。


「……何年ぶりだろう、師匠の声聞くの」

「さァな」

「連絡してくるってことは、あの子と出発しろってことよね……クロス」

「よく分かってるじゃねェか」


そう言ったクロスの声色だけで、もう何年と会っていないはずなのにニヤリとした笑みを浮かべているのが脳裏に過ぎった。それがなんだか悔しくて、溜息を吐き出す。ああ、白髪のあの子は振り回されていないだろうか?いや、振り回されてることでしかないだろう。

そんな私の様子などお構い無しに、日にちと場所を告げ、クロスは一方的に通信を切る。その告げた日に来いという意味なのだろうが勝手がすぎる。思わず零れそうになった舌打ちをなんとか耐え、二度目の息を吐く。
……そろそろかとは思っていたが、私も覚悟を決める時が来たわけだ。

クロスの命令は私にとってある意味絶対、なところがある。彼には感謝してもしきれない恩があるから。


「ホーム……か。何年ぶり、かな。何年ぶりだっけね、アン?」


なんてアンに問いかけるも、自分が一番分かっている。肩に羽を休めるアンに、軽く頭を預ければ察したアンは長い尻尾でゆるりと頬を撫でた。


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