Allergic reaction?(アレルギー反応?)

白衣の袖をめくって時間を確かめれば
休憩は7,8分残っていた

もう少し待ってみようかと空の紙コップに新しい
紅茶を注ぐ
あれから1ヶ月がたっても彼女とはここでしばしば顔を合わす
待ち合わせたことが無いことを考えれば、
かなりの頻度と言えるだろう

逆に言えば、いつ途絶えてもおかしくない
互いに苗字を知らないままの関係
その距離感を望んだのは
自分だ

無意識に口に含んだ紅茶が
味を失くした砂と化した

ぼん、と背後で鳴った突然の爆発音
杖を抜いて立ち上がれば、何かが倒れ込んでくる


柔らかい

彼女だった

「うわ!す、すみません」

ふらつきながら立とうとする甘い香りの生き物を制する
軽く目で問えば

「あの、時間がなさそうだったので、急がなきゃと思って、姿、あらわし、を、…」

真っ赤な彼女がどもった挙句、黙り込んでしまうと
こらえ切れずに吹き出した
あぁ全く、君はなんともたまらない


「ックク、それで?」

つい、からかいたくなる

「え?」

「どうして君はそんなに急いだ?何のために?」

祈るように組んだ指先を、彼女がもじもじと触れあわせるたびに笑ってしまいそうだった

「え、と、私は…」

「…君は?」

「私、は、」

彼女が顔を上げた時、やけに大きな音を立て、秒針が動いた

「時間切れ、かな?」

「…みたい、ですね」

再び俯いてしまった彼女の耳に囁く

「続きは今夜ここで聞くよ」



脱兎の如く逃げ出した彼女の背中を目で追う
こうやって見送るのはきっと最後になるだろう

今夜、彼女に告げる


僕は君を本気で
嫌っているのだと



Allergic reaction?
(アレルギー反応?)


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