飲み会にてその1
こちらは本編「若者は元気なのだ編」の番外です。元拍手お礼でした。
「蘭丸さんって学校に好きな子とかいないの?」
こんなときだからこそ普段聞けないようなことを聞いてみたい、そんな気持ちからの質問だった。
問われた蘭丸は慌てるでも、顔を赤らめるでも、不機嫌になるでもなく、ごく自然な様子で応えてくれた。
「いませんよ」
「えーっ!」
「どうしてそんなに驚くのです…」
別におかしなことではないでしょう。と蘭丸はそっけなく言った。
伊智子はと言うと、もしかしたら蘭丸の恋愛トークを聞けるかもしれない、と期待していたのか、少し肩を落としていた。
「そもそも、織田は男子校です。好きな子なんてありえません」
「あ、そういえばそうでしたね…」
県内屈指の偏差値を誇る織田高は、驚異の有名大進学率とともに、有名人やセレブのご子息御用達な男子校ということでも有名だった。
男子校、つまり男子生徒しかいないということだ。
でもそれはそれで逆に蘭丸さんがモテそうなんだけど。という言葉を伊智子は飲み込んだ。
そんな二人の様子を伺っていた景虎は、あれ?という顔をして蘭丸に言葉を投げかけた。
「でも蘭丸、こないだ鞄にラブレターすげえ入ってたじゃん」
「ちょっと!景虎殿…!」
「ら!?ええええっ!」
しょ、衝撃発言なんですけど。
蘭丸の反応を見る限り景虎の口からでまかせということでもないみたいだ。
伊智子はドキドキして蘭丸の顔をチラ見してしまい、蘭丸に「見ないでください!」と怒られてしまった。
「なんだ?蘭丸の恋バナか?」
「ちげぇよ、蘭丸のラブレターの話だって」
「へえ、興味深いな」
そして、酔っ払いたちは聞く気まんまんだ。
「こないだロッカーで鞄ひっくり返してたから荷物拾うの手伝ったんだ。その中にあった。たくさん」
「ラ、ラブレターって…織田高って男子校ですよね?」
「そう、だから俺は蘭丸ってやっぱすげぇな〜って思ってさ…」
「確かにすごすぎますね…。そんな子、うちの高校にはいなかった…」
「ちょっと、何を勘違いしてるんですか?あれは学校の人に貰ったわけではありません」
自分の話が酒の肴にされそうなことが気に入らない蘭丸は、この話をさっさと終わらせようと少しぶっきらぼうに言った。
「じゃあ誰にもらったんですか?」
「………校外の」
「え?」
「だからっ!校外の女の子からです!校門で渡されるんですよ。普段は受け取らないのですが、あの日はバイトに遅れそうだったので、仕方なく…」
これで満足ですかっ!?とでも言いたげな蘭丸の顔は真っ赤だった。
「普段は…って、しょっちゅうもらってるのか?あんなに大量の手紙を?」
「JKからのラブレターか…」
「バレンタインは戦だな」
「気をつけろよ、蘭丸。本気の女は怖いぞ」
「やっぱ蘭丸ってスゲー」
男達は黙ることなく、キラキラした瞳で蘭丸を賞賛しだす。
耐えられなくなったらしい蘭丸は手で耳をふさいで羞恥に耐えているようだった。
「蘭丸さん、スゴイって。よかったね」
「…嬉しくありません……」
「あらら」
すっかり元気のなくなってしまった蘭丸を見て、ちょっと質問の内容を間違ったかな、と反省する伊智子だった。
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