倒れた先は
うう・・・もうだめ。おなかすいた。
昨日何も食べてないし。ついでに言うと、その前の日も何も食べてないし。
更に言っちゃうと、その前の日は朝ご飯の柿の種しか食べてない。
その日から今まで、雨と空気と空気中のゴミしか食べてない。
本気でだめだ。いままで、ひもじい生活を強いられることは少なくなかったけれど、それでも学校には給食があったし家には家族がいたから苦しいことはなかった。


やっぱり、お母さんとお父さんが死んじゃった時、私も一緒に死んでおけばよかった。
そうすれば、こんなつらい思いをせずに済んだのに。


天涯孤独になってから、逃げるようにして団地を出た。
そのままなけなしのお金でその日暮らしをしてきたけれど、高校を卒業して間もない子供に、世渡りなんて無理だったんだ。
泥にまみれて生きるしかないのに、泥をすすることを拒んでいたらあっという間に一文無しになった。

ぼろぼろのジャージのポケットから、ちゃりんと軽い小銭がぶつかり合う音がした。
昨日から身の回りはくまなく探したけど、4円しかなかったし。さすがに4円じゃ何もできないし・・・。
血眼になって地面を見渡したけど、お金なんて落ちてなかったし。まったく綺麗な街だよ、ここは。生活困窮者に厳しすぎやしないかな。


倒れ込んだ地面がだんだんと湿ってくる。
乾いた頬に叩き落ちてきたのは雨粒だった。
反射的に口をあける。

土くさい雨の味がした。
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