04
「……よし!」
俺が声を上げると、後ろでそわそわと俺の答えを待っていた3人がびくついた。
……俺は怖がられているんだろうか?
まあ、それはいい。兎にも角にも3人のスタンスを聞いておかねば。
「光栄な話だってことは分かったけど……許可にあたっていくつか質問があるんだ」
そう言って3人をじっと見ると、彼らは不安げにしながらも俺を見つめ返してくる。
「まずひとつ。どういう目的のファンクラブなんだ?俺と恋愛的な意味でどうこうなりたいやつの集まり?それとも、この間俺に喧嘩売ってきたクレールみたいな狂信的な感じか?」
3人は目配せし、一言二言会話をしていくつか頷く。そしてレスターが前に出て答えた。
「僕らはエトワールさんを応援したいんです。強くて頭が良くて芯が強くて、自分の考えを持ってて、まっすぐ立ってて恰好いい。恋愛的なあれそれは……まあ期待していないこともないけど、二の次です」
ふむ。アイドルのファンクラブっぽいタイプに近いか。俺は重ねて問う。
「応援、か。自分の考えを持ってる、っていうけど……その考えが一般的な貴族制度とはちょっとズレてることは理解してるよな?」
3人はうん、と頷いて見せた。
この3人のリーダー格らしいレスターが代表して答える。
「はい、その考え方も応援したいと思ってます」
「……ふーむ、なら、俺が敬語使われるの嫌いなのもわかってるよな?」
試すような質問をするとレスターは少したじろいで、それでも俺の目を見て答えた。
「こ、この間!エミル副会長とお話されてたのを聞きました!その時言っていましたよね、『俺は敬うべき相手は敬います』って」
……言ったな。聞かれてたんだ。レスターは時折詰まりながらも言葉を発する。
「その言葉の意味を僕ら、考えました。僕ら、エトワールさんと戦っても多分勝てないし、ほかの教科もひとつだって敵いません。それって、エトワールさん本人を尊敬する理由として不十分ですか?……エトワールさんの考え方は革新的なので急に全て実践することは難しいですが、僕らなりに考えて実行していくつもりです!」
なるほど。
彼らは彼らなりに俺の考え方を噛み砕いて、その上でファンクラブ作りたいってわけか。
……なんの文句もないな。
ここで、それまでレスターに任せて黙っていたジルが前に進み出て言った。
「僕らと同じく、エトワールさんの考えに共感してるけど急には変えられない!って人もいると思うんです。そういう人たちの受け皿にも、なれるかなって……」
俺は頷いて答えを出す。
「なるほどね、……文句はないよ。俺の意見についてきちんと考えてくれてありがとう。」
軽く微笑んで握手を求めると、3人は「そんな……!」とか「お礼言われちゃった……!」とか各々の反応をしつつ顔を赤くしている。
「ただし、ファンクラブの規約は俺にも一枚噛ませてね。君らの話聞いてるとないとは思うんだけど、俺の交友関係を制限されると面白くないからさ」
そう付け足すと3人は一も二もなく頷いた。
話し合いの行く末を見守っていたアルバ、シュカ、リール、サーシャの4人は口々に「良かったねー」などとコメントをする。
アルバが俺の肩を叩いて言った。
「ま、収まるところに収まってよかったな」
アルバが自然に微笑むと、……それまで黙っていたディタが真っ赤になって顔を覆った。
「……えっ?」
驚いた声を出したのはアルバである。
その隣でシュカがにやーっと笑って言った。
「……ははーん、そーゆーこと?」
……どういうことだ?
「そっちのディタはノエも好きなんだろうけど、それ以上にアルバのファンなんだ?でもアルバは家柄が良くないからファンクラブが作れないんだねー?だからノエのファンクラブと合同で作っちゃおうってことね?」
なーるほど。アルバすげえイケメンだもんな。ディタは赤くなったり青くなったり。どこからどう見ても図星だ。
アルバを見やると、予想外といった様子で顔を引きつらせている。
「……一緒に規約、作るか?」
俺がにやにやしながら提案すると、アルバは乾いた笑い声を上げた。
「ど、どうしてこうなった……」
他人事だと思って余裕ぶっこいてるからだ、ばーかばーか!
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