02
プリントに目を落とすと、一週間後の日付が書かれているのが目に入った。
『毎年恒例・親睦レクリエーション大会』
『勝者には豪華賞品』
『気になる今年のゲーム内容は……?』
などの文言が派手な飾り文字で記されているので嫌でも目に留まる。サリバン先生が頭を掻きながら気だるそうに説明する。
「毎年恒例とはあるが、お前らは高等部1年だから今回が初めてだな。噂や校内新聞で知っているやつも多いだろうが一応説明するぞ」
生徒達の目線が一斉にサリバン先生に集まる。普段の授業態度と比べると明らかに関心の度合いが違うことが分かる。
随分力が入っているようだ。豪華賞品、とやらがよほど魅力的なのだろうか?
ぼんやり考える俺を尻目にサリバン先生は話を続けた。
「今回の種目は、学園内の森全体を舞台とした『ちょっと特殊な鬼ごっこ』だ。」
『ちょっと特殊な鬼ごっこ』……?
周りを見れば、他の生徒も俺と同じような反応をしている。
「お前ら1年は全員『逃げる側』だ。基本的には普通の鬼ごっこと思っていい。朝9時から午後3時までの間、魔法なり頭なり自由に使って鬼から逃げのびる。当然だが、鬼の他に森に住んでる魔物もいるんで、そっちへの対策も必要になる。で、鬼が誰かっつーと……」
ふむふむ。5時間という持久戦だが作戦を考えればいけないことはなさそうか。ほかの生徒達もこれなら行ける!と思ってか少し嬉しそうに見える。……が、鬼の人選にその希望は打ち砕かれることとなる。
「各学科の成績トップから4人ずつ、合計16人が鬼だ。会長副会長と、あと2人ってことだな」
それなんて無理ゲー?
という声が生徒達から聞こえてくるようだった。しかし『主席達に追い回される』と言葉だけ聞くと悪夢だが……よく考えると、結構勝算あるんじゃないだろうか。
俺の思考がその結論に至ると同時に、サリバン先生も同様のことを言った。
「まあ広大な森の中に散り散りになっている生徒を全員取っ捕まえるっつーのは、幾ら各学科主席とはいえ厳しいものがあんだな。教員側でシミュレートした結果、運にもよるが100人ぐらいは残ることが分かった。」
生徒達の安堵と期待の声が漏れる。……でもそんなに甘くはないんだろうな。俺が厄介な予感を感じ取って肘をついていると……
「100人にとなると豪華賞品の価値も下がってしまうし、なにより実力なく運だけで生き残った奴を勝者とするのもなんだ。……そこでだ、追加ルールがある」
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