自慢の彼女

「あーあ、ほんと顔がいい奴ってのはいいよな〜それだけで女からモテるんだからよ〜…」


「ふふっ…新八さんってば…そんなこと言って、新八さんも充分かっこいいじゃないですか」


「んなこと言ってくれんのは美月ちゃんだけだって。島原に呑みに行っても、いっつも左之ばっか女にモテてよ〜…俺のことなんか軽くあしらわれちまう」






はぁ、と溜息を零しながら項垂れる新八に…美月は優しく微笑み返した。…確かに、彼が言うとおり左之はモテる。町中歩いているだけで綺麗な女性の人に声をかけられたり、色街でも女性の方から人気があるようだ。






「左之さんと新八さんは別の人なんですから、比べても駄目ですよ。私は左之さんが持ってない新八さんのいいところ、ちゃんと知ってます」


「…例えば?」



「剣を振るっている姿は…やっぱりかっこいいです。知識も豊富で、私にも時勢のことなど教えてくださりますし…あと、いつも明るくて皆の雰囲気をよくしてくるところ、作ったご飯を美味しそうに元気よく綺麗に食べてくれるところも…新八さんのいいところでしょう?」


「…それ、本当か…?」


「はい。全部新八さんの魅力です」






にっこりと笑い返しながらそう答えてやると、先程まで落ち込んでいた新八が見る見るうちに普段の明るさを取り戻していった。





「ああ、もう本当に美月ちゃんはいい子だよなぁ〜!左之には勿体ないぜ」


「ふふ、そんなことないですよ。むしろ私に左之さんのような素敵な人、勿体ないんです…私のような若くない女より、もっと左之さんにふさわしい人がいるでしょうし…」


「かぁー、美月ちゃん…もっと自分に自信持っていいんだぜ?」


「ふふっ駄目ですよ、私自信なんて持ったら調子乗っちゃいますから」




新八の言葉に美月は軽く笑いながら言葉を返す。…彼なりに気遣ってくれたのだろう。本当に、優しい人だ。





「ん?新八と美月…二人で何やってんだ?」


「あ、左之さん…巡察からお帰りですか?」


「ああ、ただいま。これ、土産な」


「わざわざありがとうございます…今、お茶でも淹れてきますね。新八さんも少し待っていてください」





左之から土産の菓子を受け取ると、美月はお茶を淹れに勝手場へと向かう。その後ろ姿を眺めながら新八はぽつりと呟いた。




「美月ちゃん、いい女だよなぁ…」


「は?」


「なぁ左之、美月ちゃんを俺に譲って……」


「やるわけねぇだろ…ったく、何言い出すかと思えば」


「…だよなぁ…ああ、ちくしょう!お前はモテるんだし譲ってくれたっていいじゃねぇかよ!!」


「駄目だ…ま、奪えるもんなら奪ってみろよ。そう簡単に渡してやんねぇけどな」




ニッと得意気に笑みを浮かべる左之に、堪ったもんじゃないと新八は今日一番の大きな溜め息をついたのだった。