なみだ

美月の部屋からすすり泣く声が聞こえた。






「…美月…」


「…っあ……左之さん…ごめんなさい、私…見苦しいところをお見せして…」





そっと襖を開き、美月に声を掛けてやると…小さく蹲っていた美月は袖で涙を拭い、笑みを向けてきた。





「…左之さんは、まだ休まれないのですか?明日も早いんですから、早めに休んでくださいね…」


「お前はまだ寝ないのか?」


「…私は、もう少ししたら…」


「…そうか」


「…しっかり休んで、明日のお勤めも頑張ってください」






にっこりと、満面の笑みを浮かべながら話している美月。…その姿が、痛々しかった。





「…それでは、また…」


「…っ美月、」


「…っ!」





彼女が無理して笑っていることなんか、頭使わなくてもわかることで。自分に気を遣っていることが嫌というほど伝わってきた。だから、そんな彼女を見て抱き締めずにはいられなかった。





「…左之、さ…」


「俺の前でも無理して笑うなよ」


「…そ、んなことないです…私、無理なんか…」


「俺が、お前が無理しているかいないかだなんて…わからねぇはずがねぇだろ?」


「…左之さん、気にしすぎですよ…大丈夫です、私なら…」





強がりの言葉ばかりを繰り返す美月の姿が、見ていられない。女のくせに、本当はそんな強いわけでもないのに。彼女はいつもそうやって、一人で抱え込んでしまう。





「お前は、俺と一緒で上手く割り切ることが出来ねぇとこがあるから…わかるんだよ」


「…左之さん…」


「…泣きたくなったら、俺んところに来い。一人で泣いたりするんじゃねぇ」


「…っ…でも」


「頼むから、もっと俺を頼っちゃくんねぇか?俺は、惚れた女が傷ついてんのに何もしてやることが出来ねぇなんて…そんなのは嫌なんだよ!」


「…左之…さん…っ…ありがとう、ございます…」





ぎゅう、と左之に抱き返す美月。彼の優しさが嬉しくて、涙が溢れた。