「…で?なんでお前はあそこで働いてたんだ?」
「……皆さんの、少しでもお役に立ちたくて…」
屯所へ戻り、美月は左之の二人きりになって、少し気まずそうに話を切り出す美月。ずっと隠し通せることではないのだとわかっていた。
「これからの活動の資金が必要だと思いましたから…だから、」
「…お前が俺達の代わりに稼いでいたってか…?」
「…あまり足しにならないかもしれませんけど…何もしないよりはマシだと思いまして…」
…美月は、こういう女だってことは俺が一番わかっていたはずなのに…気遣いの彼女が何もせずにはいられないということを。
「……悪いな、お前にそんな気遣わせちまって…」
「いえっ…私が勝手にやっただけのことですから!…それに、そんな足しにもならないですし…島原とか、そういうところで働いた方がお金になるかもしれないですけど…私、生憎琴とか舞いとかしたことなくて…」
「馬鹿っ!俺がお前が島原で働くなんて許すはずねぇだろ!?」
「…ふふっ、冗談です」
「…!…ったく、お前には敵わねぇよ」
クスクス笑う美月が愛しくて、そっと彼女を抱き寄せた。
「…けど、もうお前がそんなこと気遣う必要なんてねぇよ。お前は医者なんだ。医者としての仕事を全うしてりゃいい」
「…しかし…」
「じゃねぇと、俺の心臓が持たねぇよ。美月は美月の役目を果たしてりゃそれでいい」
「……はい、本当にすみませんでした。心配、かけてしまって…」
「別にそんな気にすることはねぇ」
こうして浪士組のことを思い、気遣わせてしまう美月のためにも…もっと俺達は身を立てなきゃならねぇと改めて決意を固めたのだった。