甘やかしは禁止

「ふふ、総司君ってば…!」


「えー、だってさぁ〜」






仲良さそうな話し声が美月の部屋から聞こえてくる。






「土方さんってば、ほんと口うるさいんだよね。いいじゃない、豊玉集勝手に持ち出したぐらいでさ。」


「だって総司君ってば、それをわざわざ大きい声で読むから…ふふっ歳さんの怒ってる姿が想像つくわ」


「美月ちゃんもまた聞きたい?何ならまた取って来てあげるよ」


「歳さんに怒られても知らないわよ?」


「別に、土方さんくらいどうってことないよ。ねぇそれよりさ…ちょっと、眠くなってきちゃったから…膝枕、してもらってもいい?」


「ふふっ…いいわよ…はい」





さっ、と座り直し、総司に膝を貸す美月。それに甘えて総司は彼女の膝に自分の頭を乗せた。





「ほんと寝心地いいよね、美月ちゃんの膝枕。いつも左之さんにもやってあげてるの?」


「そうね…たまに、かしら?」


「いいなー、美月ちゃんを独占出来るんだからさ」


「あら、今は総司君が膝枕を独占してるわよ?」


「…ほんと、美月ちゃんってば鈍いよね」


「え……?」


「…今美月ちゃんになんだって出来ちゃう距離なのに」


「何だって…?」


「何する気だって言うんだよ、総司」





ふと、二人以外の声が聞こえて美月は体を揺らした。






「左之さん…巡察からお帰りですか?」


「あぁ、たった今帰った…で、だ。総司。お前…」


「あーわかりましたよ。言われなくても今退きますよ」





左之が言おうとしていたことをいち早く察した総司は、直ぐ様美月の膝上から離れる。「あーあ、心地よかったのになぁ〜」などと呟きながらふらりとどこかへ行ってしまった。





「…美月、お前は総司に甘すぎる」


「え?」


「いつも俺がいないときにはあんなことしてんのか?」


「ああ、はい。そうですよ、総司君ってば、私の膝枕が心地いいって言うんで」


「お前がやってやる必要なんかねぇだろ?甘やかすな」


「だけど皆さんお務めで疲れてるんです、このくらいで少しでも休まるなら…」


「俺が嫌なんだよ」


「…え?」


「…そんな気安く、俺以外の野郎に触れさせんな」


「……左之さん、」


「…俺もまだまだだな、こんくらいのことで苛立っちまうなんてよ」


「…私も、ごめんなさい。左之さんに嫌な思いさせてたなんて…」





そっと、左之の手のひらに自分のを重ねる美月。すると、今度は左之の方が強く握りしめて来た。






「これからは、気をつけますね」


「……あ、あぁ…」







にっこりと微笑まれてしまえば、左之もそれ以上何も言えなくなってしまった。
しかし、翌日。美月が新八に肩を揉んでいるところを目撃し、再び同じような会話をすることになったのはまた別の話。