涙、泪

「女性死神協会の慰安旅行やて!?」
「うんっ」




嬉しそうにニコニコ笑う琥珀の言葉に驚きの声を上げるギン。全く事の流れがわからない。





「そんなん僕初耳なんやけど」
「琥珀もさっき初めて聞いた!乱ちゃんがね、ノリノリだったよ!」
「…どーせまた乱菊の思い付きやろ。で、どこ行くん?」
「海だって!」
「海やて!?」





またも大袈裟に声を上げるギン。…つまりは、自分の可愛い可愛い琥珀の初の水着姿が自分の知らないところで勝手にお披露目されるということだ。




「琥珀、行ったらあかん」
「なんで!?」




ギンの思いもよらない発言に今度は琥珀が驚く番だった。





「あかんもんはあかんのや!ええか?」
「…嫌っ!」
「琥珀!?」





珍しく自分に反抗的な態度の琥珀にギンは少なからず戸惑った。





「みんなと、行くって約束したもん…!行きたいもん!!」
「琥珀、我が儘はあかんで」





我が儘を言っているのはむしろギンなのだが、彼自身に自覚はない。…いつもなら、素直にギンの言葉に従う琥珀だが、今回は違った。




「…っギンちゃんのわからず屋!そんなギンちゃんなんか、嫌い!!」





感情が高まり、泣きながら声を上げる琥珀。嫌い、とギンに怒鳴り付けると琥珀はわぁーっと更に泣き出しながら部屋を飛び出して行ってしまった。




「…嫌いて…!僕、琥珀に嫌われてもたん!?」





一方、嫌いと言われてしまったギンはと言えば…そのことがショック過ぎて、頭の中が真っ白になってしまったのだった。
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