初海体験
琥珀とギンも無事仲直りし…女性死神協会は現世の海へとやってきた。





「…わあ…!ギンちゃん、海だよ海ー!琥珀、初めて見たよ!綺麗!!」
「さよか。そりゃよかったなぁ」
「うんっ」






いつも以上にテンションの高い琥珀を眺めるギンもどこか嬉しそうである。…何せ自分が選びに選んだ水着を琥珀が可愛く着こなしているのだから。






「琥珀、よく似合ってんで。その水着」






赤地に白の水玉のワンピース型の水着。琥珀の白い肌が際立っている。よしよし、とギンは彼女の頭を撫でると、琥珀は嬉しそうにギンの腕に抱きつく。






「さすがギンちゃんだね!」
「ほんま、琥珀は可愛らしいなぁ…どれだけ僕を夢中にさせる気なん?」
「なーに馬鹿なこと言ってんのよ、ギン!そんなことより荷物運んで!今日せっかく呼んであげたんだから」
「何言うてんねん。僕の他にも六番隊長さんや十三番隊長さんとか来とるやん」
「それは朽木が呼んだのよ」
「ほな十番隊長さんは?」
「それはあたし。だって、隊長一人残していっちゃ可哀想じゃない!」
「何やそれ…それやったら最初から僕来たってよかったんやないの」
「ねぇね、ギンちゃんっ遊ぼ!琥珀、泳ぎ方知らないから教えてくれる?」
「ええよ。手取り足とり教えたるわ」






ぎゅう…と琥珀に抱きつくギン。それを琥珀も抱き返す。…いつものことながら二人の世界に入ってしまったようだ。こうなってしまえば乱菊も口出しできないことは承知の上だ。







「…わぁあ!?足付かない…!」
「そない奥行ったら溺れるで。もっと浅瀬におらんと」





海に恐る恐ると足を入れていく琥珀。すると足が付かないところまで進んでしまったようで、あたふたと手足をバタつかせて溺れかける。そんな彼女を容易く抱きかかえるギン。
琥珀は軽く海水を飲んでしまったらしく、ぺっぺ…と軽く吐き出す。






「…しょっぱい…」
「ははっ…ほんまやな」





ちゅっと、軽く琥珀の頬に口づけるギン。海水の独特のしょっぱさが口内に広がっていった。






「…海、怖い…」
「せやから僕から離れたらあかんよ?また溺れてまうさかい」
「うん…」





びしょびしょになった琥珀の頭を撫でながら、彼女を宥めるギン。先程溺れたのがよほど懲りたのか、ぎゅう…とギンの首元に腕を回し、しがみつく。






「少し休もか?」
「うん」
「そない落ち込まんでもええよ。すぐ泳げるようなるやろし」
「うん」
「…ま、僕からすればこうして琥珀に甘えられて嬉しいんやけどな」
「?」





ギンの独り言に首を傾げる琥珀。この日、琥珀にとって初めての海を体感した一日となった。
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