少女は人気者
「ギン、いる〜?」
「何やねん、乱菊。また遊びに来たん?」
「今日はいいもの持ってきてあげたわよ〜」
「何や、いいもんって」
「じゃーん」






バッと乱菊が胸元から取り出したのは、一冊の冊子。…しかも、ただの冊子ではない。





「何やの、これ!?琥珀がいっぱい写っとるやんか。しかも、こない恰好しとるとこ、僕でさえ見たことないで!?」





可愛らしい浴衣姿のものから、現世の一部の人間に人気のあるフリフリのメイド服、猫耳姿、先日女性死神協会で海に行ったときの水着姿……言わば、琥珀のお宝写真集だった。





「そりゃそーよ。だってこの写真集、女性死神協会でつくったものなんだから」
「一体何やの!?女性死神協会て」
「すごいでしょ!?修兵に無理言って作ってもらったの〜。これ、来週発売するの!それでその売上が女性死神協会の協会費になるってわけ」
「!?あかんわ、こないなやつ!僕、許さへんで!」
「そんな固いこと言うなんてギンらしくないわよ〜。いいじゃない、琥珀ってば一部の男性死神に人気らしいから売上倍増間違いなしよ!」
「せやからあかん言うてんねん!」





可愛い可愛い琥珀がこんな冊子となり、他の男どもの手に渡っていくことを考えて…ギンは思わず殺気が出た。





「いくら乱菊でも、僕許さへんで!こない勝手なこと僕に一言もなくしおって…」
「なーんとこの写真集、オリジナルトレーディングカード付きよ!全部で10種類!どう?買う気になった?」
「…う…」




ヒラヒラ、と乱菊が持つカードには…これまた可愛らしい琥珀の姿が写っている。…喉から手が出るほど欲しい。





「……乱ちゃーん?これ、どうやって脱ぐのー?」
「あらー琥珀!それもよく似合うじゃない!」
「!?…琥珀!しばらく乱菊と会うの禁止や!」
「へっ…?」





バッとギンによって乱菊から離れさせられる琥珀。一体何が何だがイマイチ状況が読み込めない。




「またこんな…格好させられて…!」
「乱ちゃんに着てって言われたから…現世の服なんだって!」




これまたフリル満載の純白ドレスを着せられている琥珀。…よく似合っているのは確かだが、ギンからすれば面白くない。






「ええか乱菊、琥珀を金商売に利用するなんてえげつない真似は僕が許さへんで」
「ちぇー…せっかくいいアイディアだったのにー…」
「あかん」
「?」




あかん、の一点張りのギンだったが…その琥珀写真集の一部をさっと胸元に入れたのは乱菊にも秘密である。
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