少女依存症
「ほんと、三番隊んとこは市丸隊長と月丸五席は仲がいいよな」






九番隊副隊長、檜佐木修兵が書類を届けに三番隊を訪ねると…相変わらずの二人の様子を見て素直な感想を告げる。二人は執務中と言うにも関わらず、イチャイチャと絡んでいて、仕事をしているかどうかも疑わしい。






「だから僕が苦労する羽目になるんだけどね…」
「お前も大変だな、吉良」





はぁ、と溜息を零すイヅルを横目に修兵は苦笑いを返す。イヅルが真面目な性格だからこそ、三番隊は成り立っているのだろう。




「結構松本さんとかも遊びに来るから更に仕事しなくなるし」
「あー…何となく想像つくな」
「イヅル〜茶入れて。あ、僕と琥珀の分と二人分やで」
「は、はい」




イヅルと修兵との会話を挟んで、ギンがお茶出しを促す。それに返事を返し、イヅルはすぐさま二人のためにお茶を入れる。




「変な話、僕と月丸君、どちらが上司かわからなりますよ…」
「市丸隊長の可愛がりぶりからすれば、そう偉そうに言えないもんな」
「仕方ないじゃない、琥珀が可愛いんだから」





ズー…と音を立てながらお茶をわざとらしく飲む乱菊。彼女の姿に修兵とイヅルは驚かずにはいられない。




「って!松本さん!!いつからここに…!て言うか僕が入れたお茶…!!」
「いーの、そんな細かいこと気にしないっ!蕎麦饅頭あげるから」
「そういう問題じゃ…!」





はい、と渡される蕎麦饅頭を受け取りながら、またもお茶を入れ直すイヅル。…最早三番隊隊舎はサボり場状態である。




「それに、琥珀、ほんとはすごく強いのよ」
「え、そうなんですか?」
「ギンが琥珀を可愛がるばかり、あまり任務に出さないでデスクワークばっかさせてるけど」






乱菊の口から出た新事実にイヅルと修兵は目を丸める。いつもギンの傍にくっついている琥珀しか見たことがないから、彼女が戦っている姿なんて想像がつかない。




「ギンってば琥珀が五席になるのだって、ほんとすごく渋ってたのよ。席官につくことはいいことだけど、その分仕事の危険度も増すわけだし」
「へぇ…流石乱菊さんも月丸五席のことには詳しいんですね」
「まーね。琥珀は私の妹みたいなもんだから…琥珀!」



乱菊が琥珀の名前を呼ぶと、琥珀は視線をギンから乱菊の方へ移す





「乱ちゃんっ!」
「今日も遊びに来たわよ〜!蕎麦饅頭、琥珀も食べるでしょ?」
「うんっ!」




パタパタ…と足音を立てながら乱菊のもとへ駆け寄る。嬉しそうに、満面の笑みを浮かべながら。そんな姿が実に愛らしい。…近くにいた修兵とイヅルも思わず見とれてしまうほど





「…なるほど、な」





どこかほっとけない…目が離せない…そんな雰囲気を持つ少女…琥珀。先程の乱菊の言葉に納得してしまう。




「…何や、イヅルと九番隊副隊長はんも…顔赤いで?」
「…!?」
「な、何でもありません!!」





一瞬、不機嫌そうに霊圧を当てて来たギンに慌ててイヅルと修兵は首を左右に振ったのだった。





「ギンちゃんっ、蕎麦饅頭美味しいよー!」
「ほな僕に一口くれるか?」
「はい、あーん」
「あーん」






琥珀の前では嬉しそうに笑みを浮かべているギン。…先程のイヅル達への態度とはえらい違いである。






「…気をつけなさいよ。琥珀よりギンの方が琥珀離れ出来てないんだから」
「…それを早く言って下さい…乱菊さん」
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