少女の強さ
乱菊が琥珀と知り合ったのは、ギンからの紹介だった。





『琥珀、挨拶し』
『…ちょっとギン、誰なのよこの子』
『琥珀言うねん。これから僕が面倒みるんや』
『面倒って…』
『…月丸、琥珀…です。よろしくっ…』





ギンの後ろに隠れながらも恐る恐ると言った様子で自分に挨拶をしてきた琥珀。小さくて、弱々しくて…どこでこんな子を見つけて来たのかとギンに問いただすことは簡単だったけれど、それはしなかった。






『…琥珀、って言うの?私は乱菊、松本乱菊よ。こちらこそよろしく、琥珀』
『!…うん、乱ちゃん…!』






琥珀を見ていると何故かそんな気が失せてしまった。不思議な雰囲気を漂わせるこの少女に、ギンもこの雰囲気に当てられてしまったのだろう。


ギンはすぐさま琥珀を真央霊術院に入学させた。元々琥珀にも霊圧があり、死神の素質を持ち合わせていた。そのため彼女なりに成長し、力もつけていった。






「琥珀〜遊びに来たで〜」
「!ギンちゃん…!」





ギンはよく、琥珀の様子を見に霊術院まで足を運んだ。そんな彼に嬉しそうに駆け寄る琥珀。二人の間には他の人には踏み入れることのできない関係が築かれていたのは見ていればわかった。





「頑張ってるか〜?琥珀」
「うんっ」
「早く僕んとこにおいで、待っとるで」
「うんっギンちゃん!」





ただの流魂街生まれの少女が、天才児と呼ばれ、護廷十三隊に入ってすぐに三席にまで昇りつめたギンと仲睦まじくしているのを疑問に思った者もいた。…よく、思わない者もいた。

その日はたまたま乱菊が使いで霊術院の方まで足を伸ばしていた。ついでに琥珀の様子を見に行こうと気まぐれだった。





「…あ、いたいた…!琥珀!!」
「!!」





霊術院の庭の木の陰に隠れている琥珀の姿に疑問を感じつつも、乱菊は彼女のもとに近付いていく。





「たまにはギンじゃなく私が遊びに……っ!?琥珀、これどうしたのよ!?」
「…あ、乱ちゃん…っ」





琥珀の着ている着物はボロボロで、彼女の綺麗な白い頬は真っ赤に腫れている。…頬だけじゃない、体のあちこちに傷が出来ていた。





「…じ、授業で…怪我したの……」
「こんなの…授業とかでもならないわよ…!特にこれ、誰かに叩かれた後じゃない!」
「……乱ちゃん…」
「…とにかく、このことはギンに伝えてくるから、少しここで待って…」
「…やっ…駄目!!」





瞬歩でギンのところへ向かおうとする乱菊を、琥珀は彼女の死覇装を掴んだ。





「…お願い、ギンちゃんには…ギンちゃんには、言わないで……」
「…琥珀…アンタ……」
「お願いだよ…乱ちゃん……」






涙を瞳に浮かべながらそう言われ…乱菊にはその手を振り払ってまでギンのところへ向かうことなど出来なかった。
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