名前のない関係
僕と琥珀との関係は、どの関係性も当てはまる。
だって僕らは親と子のようで、兄と妹のようで、男と女であるからや。





「琥珀、そろそろおいでや〜」
「うんっギンちゃん!」





ぽんぽん、とベッドを軽く叩きながら琥珀を呼ぶと、彼女は従順な犬かのように僕の元へ飛び込んでくる。そんな彼女を抱き、同じベッドで寝る。…別にそこにやらしい意味はあらへん。






「…へへっ、ギンちゃんあったかいね…」
「琥珀が冷たいんや。何なん、この冷たさは。風邪引いてまうやろ?」
「大丈夫だよ〜ギンちゃんがあったかいから、ちょうどいいもん…」





ぎゅう…と僕の方にしがみついてくる琥珀。彼女の手足はどこか冷たく、ほんまに風邪引いてまうんやないかと僕らしくもなく心配してまう。






「ほな、もっとあっためてあげるわ」
「うん、ギンちゃん…だーいすき」
「僕も、大好きやで…琥珀」





僕とはかなり歳離れておるし、危なっかしいから目離せへんし、せやけどどこか男として惹かれる部分がある。それが琥珀や。
せやから僕らはいろんな関係性の言葉が当てはまるけど、どれも当てはまるから正解も答えもあらへん。それが、僕らや。





「…眠く、なってきた…」
「まだあかんで、琥珀。ちゃんといつものやらんと」
「…うん、ギンちゃん…おやすみのちゅー」





ちゅっと可愛らしい音と共に二人の唇が触れる。これはもう二人にしてみれば日常茶飯事のことで、生活の一部でもある。





「ええ夢見るんやで、琥珀」





スー…と先に寝入ってしまった琥珀の髪に触れながら、ギンは彼女の額に口づけたのだった。
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